ある関係者は、「眞子さまはまだ若く、お金をほしいとは思っていないだろう」と話す。1億数千万円の一時金を寄付するなどして手放し、結婚する可能性がある。だが、その後、生活していけるかには疑問符がつく。「働くとしても、就ける仕事には制約があるでしょう。また、お相手も同様に『お金はいらない』と考えているかはわからない」(前出の関係者)。今後の長い人生で何が起こるかもわからない。一時金は、いざというときに必要になるお金かもしれないのだ。

 一方、皇室のこれからを考えたとき、歴史学者で静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんや山下さんが懸念するのが、さらに加速するだろう国民感情との乖離(かいり)だ。

「私でさまざまなことがあっても、公では国民に寄り添われ、絆を築いてきた。上皇さま、上皇后さまが積み上げた国民との絆を大切にしてほしいが、このままでは国民の心は離れてしまう。皇室の多難な道の始まりではないか」(小田部さん)

 山下さんはこう話す。

「皇室と国民との関係は、憲法や皇室典範のみによって形作られているわけではありません。象徴天皇制度を維持していくためには、『精神的なつながり』が必要だと思います」

■公私のバランスの課題

 天皇は行動によって自分の気持ちをあらわし、国民はそれを見て信頼や尊敬、敬愛の情を持ってきた。

「平成の時代は理想的な象徴天皇制度で、だからこそ生前退位も実現したのだと思います。眞子内親王殿下の結婚が、皇室に対する国民の思いにどう影響するかを考えると、マイナスになることはあってもプラスになることはないのでは」(山下さん)

 皇族が個人としての自由と、公のバランスを取ることが難しくなってきた背景には、時代による変化がある。戦後、華族制度はなくなり、皇族も一般の人の中で育つようになった。学びの場も、学習院に限らなくなってきた。

「皇室が国民に近づき、価値観、考え方も近くなってくれば、皇室の方々の『個』や『私』の比重が大きくなるのは自然なことです。問題が起こる可能性はずっとあって、今回それが表面化したということです」(同)

 今後も皇族の「私」に関する問題は形を変えて出てくることになるだろう。そのとき、どう対応するのか。

「国民と皇室が、共に考えていくしかない。今回の一件はそれを改めて知らしめたのだと思います」(同)

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2020年12月14日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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