
スティーブン・スピルバーグ作品への出演などで話題の、俳優で歌手の森崎ウィンさんがAERAに登場。「今でも毎回必死です」と笑う森崎さんに、現在の思いを聞いた。AERA 2020年12月21日号から。
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「もう一歩、なにかが足りない」
スティーブン・スピルバーグや深田晃司といった名だたる監督たちの作品に出演したこの3年について聞くと、意外にもそんな言葉を口にした。
「役への向き合いかたなのか、普段の生活なのか。もう一歩覚悟が足りないのではないか、と思う自分がいます」
柔らかい口調のなかに、葛藤がにじむ。
それが、とても人間らしい。
ミャンマーに生まれ、10歳で来日。俳優は“テレビのなかの人”というイメージしかなく、憧れを抱いたこともなかった。だが、14歳でスカウトされ、俳優を続けるうちに、「これはやりたいことなのかもしれない」と思えるようになった。意識が変わったのは、スピルバーグ監督の「レディ・プレイヤー1」(2018年)に出演してからだ。
「『本当に向いているのだろうか』という気持ちがぬぐえなかったのですが、『この世界で生きていけるかもしれない』と思えるようになりました。だったら、泥水を飲んででもやってやろう、これを仕事にして生きていこう、と」
「どうしたら仕事が決まるか」ではなく、「どうしたらもっとよくできるか」を強く意識するようになったのもこの頃だ。
「とはいえ、最近またオーディションに落ちてしまって」と笑う。
「順風満帆というわけではまったくなく、毎回必死です」
オープンで正直だ。30歳を迎え、「飾るのをやめよう」と考えるようになった。
「深田晃司監督も、今日撮影をしてくださった蜷川実花さんも、多くの『人』を見てきた。取り繕っても、きっとすぐに見透かされてしまう。求められることには懸命に取り組みますが、『僕はこういう人間だ』と飾らずにさらけ出していきたいと思っています」
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2020年12月21日号