相続税の増税が目前に迫っているが、いざという時のために準備をしておかないと、後々もめることになる。相続税の申告と納付は、被相続人が亡くなった日の翌日から、「10カ月以内」にするものと相続税法で決められている。遺産分割がまとまらない状態でこの10カ月を迎えると、各相続人の取り分が不明のため、配偶者の税額控除の特例などが使えず、ひとまず高額な相続税を支払わなければならなくなる。この「10カ月」で家族を混乱させないために、遺す側が事前にしておくべきこととは。
家族会議は離れていると難しいが、ぜひ実践してほしい。公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士の曽根恵子さんは言う。「財産を相続人に対してオープンにするのが、相続でもめないポイントです。これで、相続人同士で疑心暗鬼にならなくなります」
話し合いをしておくと、公正証書遺言も実態に即した形で書くことができる。
「せっかく遺言書を書いても、『財産を子ども3人に委ねます』とあいまいな書き方では分けようがありません。『誰々に1千万円を渡す』と書いているのに、残っていないこともありました。預金は変動するため、金額を書くときには要注意です」(曽根さん)
遺言書のこんな“トラブル”もある。『わが家の相続を円満にまとめる本』(実務教育出版)の著者で、弁護士の小堀球美子(くみこ)さんが言う。
「『誰々にすべての遺産を渡す』という内容だと、ほかの相続人の『遺留分』が問題になります。その場合はだいたい、すべての遺産を継いだ人が、代償金で遺留分を支払うことになってしまいますね」
遺留分とは法定相続人が最低限得られる遺産のこと。遺留分を受け取れない相続人は、遺留分減殺請求をして権利を主張することもある。そういった相続のルールを知らずに書くと、かえって遺族を混乱させてしまうこともあるのだ。
※週刊朝日 2013年3月15日号