料理は実は科学だという。知っていれば年末年始がちょっと楽しくなるおいしさのメカニズムを、東西の科学する料理研究家に聞いた。2020年12月28日-2021年1月4日合併号から。
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料理は科学でできている。
アメリカで料理本『THE FOOD LAB~料理は科学だ~』がベストセラーになり、料理界のアカデミー賞といわれる「ジェームズ・ビアード賞」を受賞したのが数年前。著者はマサチューセッツ工科大学卒業で科学者という異色の経歴を持つ料理人、J.ケンジ・ロペス=アルト氏だ。翻訳者の上川典子さんによると、「スクランブルエッグは調理15分前に塩を入れると、水分がにじみ出さずふんわり仕上がる、といった、科学的根拠に裏打ちされた料理法が並び、男性からも支持を得た」という。
料理を科学するというと、難しそうに聞こえるが、実際どうなのか。国内の科学する料理研究家たちに話を聞いた。
「おいしさには理由があります。仕組みがわかれば、簡単です」
そう力説するのは、関東で活躍する料理研究家のさわけんさん。
たとえば、ごちそうの定番、肉料理。柔らかくジューシーに仕上げるコツは、ズバリ「温度管理」にあるという。
「肉によって適温は違います。牛肉なら65度を超えると、たんぱく質が変性し、縮んで硬くなってしまう。牛肉は58~60度で調理しましょう。歯切れのよさなら、58度がベストです」
そんな微妙な温度をどう実現すればいいのか。
「昨今人気の低温調理器を使いましょう。棒状で湯煎にかけるタイプが手軽ですよ」
確かに検索すれば、さまざまな商品やレシピサイトが並ぶ。湯煎タイプの低温調理器を使いこなすコツは、芯温計を用意し、設定温度を近づけたい芯温の+3度に設定することだという。
「肉の厚みによって理想の芯温に達するまでにかかる時間は違います。そこで備えておきたいのが芯温計です。低温調理が数倍かんたんになります」
■豚肉と鶏肉は65度
ローストビーフなら、芯温が58度になるのを待ち、30分ほどキープする。食中毒予防のために新鮮な食材を使い、高齢者や小さな子どもがいる場合は、62度で30分は置こう。