上皇さまの天皇退位をめぐる有識者会議で、座長代理を務めた政治学者の御厨貴さん。今の皇室が抱える問題について、作家の林真理子と語り合いました。
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林:先生は天皇陛下の退位のあり方を考える有識者会議の座長代理をされましたけど、まさか皇室がこんなことになるとは思わなかったですか。
御厨:まったく思わなかったですね。天皇が退位を表明されたこともびっくりでしたけど、あれを実現すれば、今までは天皇陛下ご夫妻だけに光が当たってたのが、今度は上皇さまになられるので、上皇ご夫妻、天皇陛下ご夫妻、皇嗣殿下ご夫妻、この3代にわたって皇室を見られることになる。今までのモノトーンの天皇・皇室ではなく、非常にカラフルな天皇・皇室になって、それぞれがそれぞれの魅力を発揮していけるのではないかと思ったし、周りにもそう言ったんです。それがこんなことになっちゃって。
林:「税金を使ってこんな好き放題なことをしていいのか」という論調がありますが、皇室の方に関して「税金を使いやがって」という声があがるようになったのは、ちょっとまずいんじゃないかなと思うんです。
御厨:ただ、皇室の問題でいちばん怖いのは、みんながまったく関心を持たなくなることです。これは非常に危険なんですよ。天皇の存在とか、皇居の意味もわからなくなって、「あそこは一等地なんだし、公園にして開放すれば?」とかいう話が出てくる可能性があるわけですよ。だけど、「税金ばかり使いやがって」というのは、「皇室? 何それ」という状況になるよりはまだマシ。関心を持っていることに変わりはないですから。週刊誌にいろんな取り上げ方をされますけど、無視されるよりはまだマシだと思います。
林:ああ、なるほど。
御厨:ただ、皇室の側から反論はできませんから、言われっぱなしになっちゃうわけですよね。だから本当は宮内庁長官がもっと考えていろいろな発言をすべきなんだけど、宮内庁長官の西村(泰彦)さんはああいうことを中途半端に言っちゃった感じがするんですよね(12月10日の定例会見で「小室さん側は説明責任を果たすことが重要」と発言)。最終的に皇室をこうしたいという考えがあって、その第一歩としてしゃべってるならいいんだけど、今の非常にまずい状況を何とかしようという一時的な措置というスタンスでしか言ってないので、あの発言がどういう千波万波を呼ぶかわからない。