日本胸部外科学会によると、気胸の手術件数は年間約1万2千件で、内科的治療の症状を含めるとさらに増える。1986年に全国にさきがけて気胸研究センターを開設し、現在も年間約300例の手術を手がける、玉川病院気胸研究センター長の栗原正利医師に話を聞いた。
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気胸に関しては、医師や施設によって説明や治療が異なることが多く、患者さんが迷うこともあります。
病院によっては胸膜癒着術という手技をすすめられることがあります。生体に使う「のり」を胸腔内に入れて肺と胸膜を癒着させ、肺が縮まないようにするもので、確かに肺は縮みにくくなりますが、やはりその後、手術しにくい・できない事態に陥りかねません。胸膜癒着術を実施する施設は多いので、これからもっとこの問題点を発信していかなければいけないと思っています。
たとえば肺がんなら、ガイドラインにもとづいた、どの施設でも受けられる標準治療がありますが、気胸はまだそれが十分ではありません。現在、より安全な治療法を普及させるために、日本気胸・嚢胞性肺疾患学会が中心になって治療ガイドラインを作成しています。
また、気胸は男女比が8~9対1と圧倒的に男性に多いのですが、女性にも起こります。その中でもっとも多いのが月経随伴性と呼ばれる続発性気胸です。子宮内膜症が原因で、飛び火した子宮内膜が横隔膜や肺で増殖して穴を開けてしまうものです。気胸の治療だけで、原因の子宮内膜症に言及されない場合もありますので、注意が必要です。
※週刊朝日 2013年3月22日号