良くも悪くも浮世離れした存在であり、それ故に多少一般社会の枠組みから外れた行動をとっても、世間から大目に見てもらえる土壌があった。

 しかし、世の中の情報化が進み、以前のように芸能人がカリスマ性や神秘性を保つことが困難になると、ママタレントや主婦タレント、読者モデルなどに代表されるように、多くの芸能人たちが一般社会やファンに対して「身近さ」や「親近感」をアピールし、「好感度」を武器にするようになる。

 そうした「好感度タレント」たちの多くは本来の芸よりも好感度の高さや趣味の知識などを売りにし、場合によってはSNSなどで私生活も切り売りしながらマルチに仕事を得る者もいる。

 一般社会との距離感を大幅に縮め、日頃から「身近さ」や「親近感」、「好感度」をアピールしている手前、当然のことながらかつてのスターのような「芸能人だから」といった特別待遇は許されない。

 ひとたびスキャンダルを起こせば一般社会の倫理観で判断されるし、“お行儀の良さ”が求められる「好感度タレント」ともなれば、より一層厳しい批判を浴びることになる。

 報じられた記事の内容のインパクトも当然無視できないが、こうした背景からも近年は「お笑い芸人」から「好感度タレント」へとシフトチェンジし、大きな成功を収めていた感のある渡部が一連の不倫騒動でここまで炎上するのは必然の流れだ。

 加えて言えば、一部で伝えられた年末の「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」(日本テレビ系)のスペシャル番組での復帰報道が仮に事実で、結果的に実現していたとしても、世間の反応はかなり厳しいものになっていただろう。

 これまで長きにわたり好感度タレントとして活動し、その恩恵にあずかっていながら、不倫スキャンダルでそのイメージが崩壊し、維持できなくなったからといってその途端に公の場に姿も現さず、かつての「お笑い芸人」モード全開でシレッとバラエティー特番で復帰というのは、いささか都合が良すぎると判断されても仕方がない。

 芸能人および芸能界と一般社会との距離感が縮まる中、来年もタレントたちには厳しい倫理観が求められることになりそうだ。(芸能評論家・三杉武)

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三杉武

三杉武

早稲田大学を卒業後、スポーツ紙の記者を経てフリーに転身し、記者時代に培った独自のネットワークを活かして芸能評論家として活動している。週刊誌やスポーツ紙、ニュースサイト等で芸能ニュースや芸能事象の解説を行っているほか、スクープも手掛ける。「AKB48選抜総選挙」では“論客(=公式評論家)”の一人とて約7年間にわたり総選挙の予想および解説を担当。日本の芸能文化全般を研究する「JAPAN芸能カルチャー研究所」の代表も務める。

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