■寡婦控除の課題に切り込む

――今までは見過ごしていたけれど、特に関心をもつようになったテーマはありますか?

稲田:未婚のシングルマザーの寡婦控除(かふこうじょ)の問題です。今までは死別や離婚を理由にひとり親になった人に対する支援はありましたが、未婚の人に対する支援はありませんでした。自民党の考え方では、死別や離婚でひとり親になっている人と、未婚でひとり親になっている人の間には大きな川があって、絶対にここは一つの線を引くという考え方なんです。

 去年、それはおかしいと言って、未婚のひとり親でも寡婦控除の対象とすることが実現しました。この問題が解消した時に、シングルマザーの会の代表が「同じ新宿の駅なのに風景が違って見えた」とおっしゃったんです。当事者の方は、お金の問題よりも、そういうふうに社会から排除されて、不平等に扱われていることがすごくつらかったのではないかと思いました。

――自民党が未婚のひとり親を認めるということがすごく意外でした。

稲田:自民党でははっきり言う人と言わない人がいますが、結婚もしないで子どもを産んでいる女性は、ふしだらな人かキャリアウーマンなんだという前提があって、未婚のひとり親まで支援したら、わざわざ結婚しなくてもいいという人が出てきて、法律婚が壊れて、伝統的な家族も壊れるという理屈で考えられているんです。

――そういう女性こそ苦しんでいる可能性が高いのにですか?

稲田:そういう人こそ救わないといけないですよね。ひとりで子どもを育てる大変さは、離婚も死別も未婚も変わらないのに、公平じゃないと思いました。

――自民党内で対立しませんでしたか?

稲田:若い男性議員の中には、意外と賛成してくれる人もいました。そこで賛同者を募ったところ144名が集まりました。数は力ですから、それでなんとか突破できたんです。税制の改正が成立したら、もう誰も何も言わないです。よかったね、となるんです。

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