※イラストはイメージです (GettyImages)
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 シニア世代の人は、スマートフォンやパソコンに保管した情報を家族にどう残すか準備しているだろうか。総務省によると80歳以上でもインターネット利用率が57%に達する一方で、デジタル機器のロックを解除できずに困る遺族も増えている。「デジタル終活」に必要なことを専門家に聞いた。

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「夫が使用していたスマホとパソコンのロックが開かない。なんとかならないでしょうか」

 デジタル機器のデータ解析会社・デジタルデータソリューションには、亡くなった人が所有していたスマホやパソコンなどの「デジタル遺品」のパスワード解析をしてほしいという、遺族からの相談が絶えない。

 遺品の持ち主が若い人とは限らない。同社COO(最高執行責任者)の上谷宗久さんによると、デジタル遺品として持ち込まれたスマホやタブレット端末などの持ち主の3割は50代以上だ。60代以上も15%いる。

 ロック解除の目的は、

(1)スマホ内の電話帳データの取得
(2)写真や動画などの思い出の品の取り出し
(3)ネット証券の取引やネット銀行の口座の確認

 に大別できる。

 知人や家族の電話番号や住所、メールアドレスも、紙の電話帳や手帳よりもスマホに内蔵された電話帳アプリで管理している人がほとんどだ。

 日本デジタル終活協会代表理事の伊勢田篤史弁護士は、こう話す。

「スマホを開けなければ周囲に葬儀の連絡すらできないというパターンが現実には多い。これほど『終活』という言葉が浸透しても、実際に終活を行っている人は、ほとんどいないというのが私の実感です」

 深刻なのは、相続財産となる(3)のネット証券の取引やネット銀行の口座の確認だ。

 総務省の情報通信白書(2020年版)によると、60代以上で、インターネットを利用するのは「金融取引」のためと回答した人は15.9%にも及ぶ。

 伊勢田弁護士は、ネット銀行やネット証券をヘソクリ口座として利用する人は少なくないと話す。

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