その起案者はブライダル業界の収益構造をしっかりと分析して、ビジネスとして参入したときに勝てる可能性が高いことを具体的に示したとのこと。「『ゼクシィ』が創刊されればブライダル業界に参入したい」と考えているレストランや宝飾会社からの言質を取り、さらにブライダル業界にはびこっていた仲介業を飛ばして婚礼希望者と関わりたいというホテル業界の悩みを押さえて、その肉声を役員にぶつけることで決断を迫ったようです。
それまでの起案者は、机上でブライダルビジネスの可能性の良し悪しを考えていただけに、役員からすれば迫力も違い、これまでのような否定の声は全く上がらなかったようです。
このように、頭ごなしの反対にめげる前に、違いをアピールする心がけを持ちましょう。先の「前例がない」の反対でむしろ肯定的な発言と捉えて、相手をうまく巻き込み、前向きなほうに持っていく方法もあります。
「それだけ可能性があるということです。だから一緒に考えてください」
「似た話があるというのは貴重な情報でした。その感度の高さで知恵を貸していただけませんか」
と褒めて協力を仰ぎましょう。
■西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている。