12月15日時点では、1日あたりの新規感染者数の最多は3038人(12月12日)だったが、1月8日には7882人と2.6倍に拡大。「空白の1カ月」の代償はあまりに重い。
■6割超「ポストコロナ」
第3次補正予算総額は19兆1761億円と過去最大規模だが、肝心の感染拡大防止策は4兆3581億円で全体の2割ほどにすぎない。
一方、6割超を占めるのが「ポストコロナ」をにらんだ経済刺激策。GoToトラベルに1兆円を計上するなど、緊急事態宣言下の今見ると噴飯ものの内容が並ぶ。菅政権が12月15日の時点で、年始には感染拡大は減少すると安易な想定をしていたことがはっきりと見てとれる。
立憲民主党の福山哲郎幹事長は、18日から始まる通常国会で予算の組み替えを提案する。
「カーボンニュートラルに向けた基金創設(2兆円)なども重要ではあるが、あまりにも今である必要性がない。今は緊急事態宣言によって営業時間が制限される飲食事業者や関連業者、医療機関、医療関係者、困窮世帯の支援を優先すべきです」
さすがに野党の反対もあり、当初1月15日で打ち切られるはずだった「持続化給付金」や「家賃支援給付金」は、直前で1カ月延長が決まった。しかし雇用調整助成金は、2月末には終了される模様だ。補正予算には雇用調整助成金の特例措置の予算が5430億円計上されているが、数字から見ても2月末以降の新規の予算ではない。
まずは直接給付を含む、目の前の生活や事業経営を直接支える支援の拡充が求められる。福山氏は東日本大震災時に官房副長官として緊急事態の最前線に立った経験を踏まえ、現在の菅政権の対応を「最悪のケースが想定されていない安易な危機管理」だと憤る。
「もし、12月の時点で国会を延長して与野党で納得できる内容の補正予算を通せていたならば、緊急事態宣言発令と同時に使える具体的な武器を準備できた。今国会で与野党が協力して迅速に補正予算を組み替えられたとしても、成立は2月初旬。年度末まで、事実上2カ月しか使えないのです」
甘い見通しで感染抑止よりも支持率を優先させた菅政権の無策が、根拠の希薄な精神論以外に具体的な対策を打ち出せない状況を招いているのだ。(編集部・中原一歩)
※AERA 2021年1月25日号より抜粋