ソフトバンクの強さはいつまで続くのか? (c)朝日新聞社
ソフトバンクの強さはいつまで続くのか? (c)朝日新聞社

 現在のプロ野球界の王者と言えば間違いなくソフトバンクになるだろう。昨年の日本シリーズでは2年連続の4連勝で巨人を一蹴し、4年連続の日本一に輝いた。このオフは今のところ目立った補強こそないものの、大きな戦力ダウンもなく今シーズンもリーグ優勝、日本一の大本命という状況は変わらないだろう。果たしてこの強さはいつまで続くのか、巨人がかつて達成したV9にどこまで迫ることができるのか、今後の展望と不安要素について探ってみたいと思う。

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 昨年の戦いぶりを振り返ってみると、大きな強みは安定した投手陣にあると言えそうだ。チーム防御率は12球団で唯一の2点台。与四死球の数こそリーグ5位の多さながら、他の指標は軒並みリーグトップの数字である。特にチーム奪三振1035個はリーグ2位のオリックス(937個)を100個近く上回っており、いかに相手打者を圧倒しているかがよく分かる。

 中でも他球団と大きな差を見せつけているのが救援防御率2.60という数字を叩き出しているリリーフ陣だ。8回をモイネロ、9回を森唯斗というパターンが確立されており、アンダースローの高橋礼、左サイドの嘉弥真新也という他にはなかなかいないタイプの実力者を揃えているのも大きな武器だ。サファテ、岩嵜翔、甲斐野央といった実績のある投手が故障で離脱していることを感じさせない層の厚さで、泉圭輔、椎野新、板東湧梧、津森宥紀などここから成長が見込める投手も多い。高橋礼が先発に回ったとしても、十分にその穴を埋めることはできるだろう。

 先発投手陣も強力だが、今後のことを考えると大きな課題となるのが千賀滉大のメジャー移籍だ。契約更改後にはアメリカ行きの話がほとんどだったとコメントしているように、早ければ今年のオフには退団することも十分に考えられる。石川柊太、東浜巨、先述した高橋礼はまだまだ力があるが、やはりそれ以上に太い柱を確立したいというのが本音だろう。

 しかし未知数な部分はあるものの杉山一樹、C.スチュワート・ジュニアといったスケールの大きな若手が控えているのは心強い。武田翔太、田中正義、松本裕樹、高橋純平といったプロ入り前に高い評価を得ていたドラフト1位の選手たちをプラスアルファとして考えられるのは高い育成力の賜物に他ならない。仮に千賀が抜けたとしても、将来への備えはできている印象だ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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