その一つ、ADHDは、幼児期から多動(おちつきのなさ)や不注意、衝動性の高さ(我慢強くなさ)が目立ち、社会生活などに悪影響を及ぼすことのある発達障害です。そもそも子どもは大人よりも多動で不注意で衝動性の高いのが一般的ですが、それらが年齢相応の程度よりも目立つということです。有病率は子ども世代で3~5%程度、成人世代で2~2.5%程度とされています。
たとえば「ドラえもん」に出てくる「のび太君」は、勉強中にはよく貧乏ゆすりをし(多動性)、忘れ物、落とし物が多い(不注意)などのADHD的な特徴が描かれています。
インターネット依存とADHDの関連は広く知られています。たとえば韓国の小学四~六年生の調査では、ADHD傾向の少ない生徒たちのIAT(インターネット依存度テスト)得点は50点以上(インターネット依存一歩手前~依存症レベル)が3.2%だったのに対し、ADHD傾向の高い生徒たちでは、32.7%を占めたと報告されています。
台湾の高雄医学大学のコー氏は、ADHDとインターネット依存が高い関連性を示す理由を以下のように仮説しています。
(1)インターネットは一般に現実社会よりレスポンスが速いので、衝動性のために待つことの苦手なADHD傾向のある人にとって心地よい。
(2)(ゲーム好きな人は)ゲーム中には脳内に快楽をもたらす神経伝達物質(ドーパミン)が放出されるため、(ADHDを持つ人は前頭葉のドーパミン系の神経伝達が不十分であることが知られており)現実生活でのストレスを、インターネットやゲームによる活動で補っている<インターネットやゲームによって、自己治療的にドーパミンを補っているということです。筆者注>。
(3)ADHDを持つ人はその衝動性のために自己制御がより困難なので、一旦インターネットにのめりこむと自己制御しにくい。
(4)ADHDを持つ人はその衝動性、過活動、不注意などの症状から現実生活では不適応を起こしやすいが、インターネット上ではこれらの症状が覆い隠される可能性がある<インターネット上では現実生活よりADHD症状が目立たない傾向にあるということです。筆者注>。
ADHDの持つ性質が、スマホなどに依存させやすくしているのは間違いないだろうと思われます。さらに、もともとのADHD症状はさほど強くなくても、スマホ(特にゲーム)依存の影響で「負の強化」の不快さなどによる精神症状の悪化や睡眠問題も絡むことによって、不注意や衝動性などのADHD症状が悪化したように見える面もあろうかと思われます。このように、ADHDとスマホ依存症は、相互的に悪影響を及ぼしていると考えられます。