3人目は、15年入団のドミニカ国籍の左腕、ラウル・バルデス。野球で大金を稼ごうと、生まれ育ったキューバから亡命に失敗すること5回。数週間の刑務所暮らしのあと、6度目でドミニカへの亡命に成功したが、その代償として、兄が10年間刑務所に入れられてしまう。そんな苦難の数々を経てマイナーから這い上がり、10年に32歳でメジャーデビューをはたした苦労人だった。

 中日では3年間通算17勝24敗、防御率3.49。開幕からチームが19試合連続で先発投手に白星がつかない珍事となった17年、4月23日のDeNA戦で8回を無失点に抑え、開幕20試合目で先発初勝利。39歳の年齢と風貌から“おじいちゃん”のニックネームで親しまれた。同年はオールスターファン投票の先発投手部門で菅野智之(巨人)に次いで2位の19万7655票を集め、監督推薦で初出場をはたしている。

 昨季はバルデス姓の選手が不在だが、今季以降、通算4人目のバルデスが中日に入団する可能性もありそうだ。また、もう一人、マルティネスが加入すれば、同時期に3人が在籍という事態も十分考えられるが、もしイニシャルが「A」または「R」だったら、現在の2人と重なり、ますますややこしくなる?(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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