菅義偉政権の発足から4カ月余り。「叩き上げ」ともてはやされた宰相はコロナ対策の失敗で急速に求心力を失いつつある。菅義偉首相は1月18日、新設のワクチン担当相に河野太郎行政改革相を指名するという“奇手”を繰り出した。自民党幹部がこう語る。
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「ワクチンで挽回しなければ支持率は回復しないが、厚生労働省は薬害を警戒しているので田村憲久厚労相がいくらスピードアップを指示しても前に進まない。当初は小泉進次郎環境相の名前も挙がったが、脱ハンコで実績をあげた河野氏のほうが適任となった」
だが、コロナ対策は田村氏に加えて西村康稔経済再生相も担当していることから、今後を不安視する声もある。
「西村氏は河野氏に見せ場を奪われ内心おもしろくないだろう。船頭が多すぎて転覆しなければいいが」(官邸関係者)
早くも雲行きは怪しい。西村氏や田村氏は露出を競うかのように頻繁に会見しており、情報の整理は困難。さらに、全国民に必要な数量のワクチン確保の時期をめぐっては、「6月まで」とした坂井学官房副長官の発言を河野氏が会見で「政府内で情報の齟齬(そご)があった」と否定。坂井氏が「齟齬は生じていない」と反論するなど、混乱が生じたのだ。
「河野氏はあえて波風を生み出し注目を得てきた人物。良く言えば突破力があるが、独善的で役人とうまくやるのは難しい。いずれ官邸とうまくいかなくなるのでは。坂井氏も坂井氏ですが……」(前出の官邸関係者)
それでも、河野氏という「劇薬」に頼らざるを得ないほど菅政権は追い詰められている。ある自民議員は言う。
「支持率が30%を切れば、菅首相は解散できないよ」
党内の動揺を示すように、18日に自民党本部で開かれた経済成長戦略本部の会合も大荒れだった。別の自民議員が言う。
「出席議員からは新型コロナで打撃を受けた産業に対し、補償の上積みを望む声が複数出た。『このままでは衆院選に負ける』と訴える議員もいた」
20日に米国大統領に就任したバイデン氏は日本円にして約200兆円の追加経済対策を発表。1人あたり約14万5千円相当の直接給付も含まれる。日本政府も2021年度は106兆円を超える予算を組む予定だが、経済支援の内容が複雑で対象者が少ないとも指摘される。会合に出席した安藤裕衆院議員は言う。