昨年の4月と6月に起きたシッターによるわいせつ事件は、本サイトも含めた一部メディアが報じた後に、ようやくキッズラインも事実を公表したという経緯がある。今回の無届け問題も昨年8月に自治体からの指摘で発覚していたが、同社がこの件をホームページに掲載したのは昨年12月28日だった。

 昨年からキッズラインの問題を追求してきたジャーナリストの中野円佳氏は、同社で不祥事が続く背景をこう指摘する。

「組織のガバナンス不足が大きな要因だと思います。経沢香保子社長はゼロから事業を立ち上げて規模を拡大していくことは上手ですが、ビジョン先行型で、質への配慮は苦手な印象を受けます。しかし保育事業という子どもの命を預かる仕事は、リスクを限りなくゼロに近づける努力が必要な領域です。その観点で仕組みを構築する参謀、片腕のような人がキッズラインにはいないのでしょう。経沢さんに意見を上げにくい雰囲気、異論を出しにくい社風も根底にあったと聞いています」

 中野氏は、わいせつ事件が起こった後の昨年9月、経沢氏にオンラインでインタビューをしている。その際、経沢氏は組織の抜本的改革と自身の意識改善などを涙ながらに訴えていた。また、シッター無届け問題でも今年1月に中野氏は直接話を聞いており、経沢氏は「コンプライアンス第一という認識の甘さ」を反省していた。だが、社長がいくら反省と謝罪を繰り返しても、不祥事が止まらない。経沢氏が語っていた言葉は一体なんだったのか。

「SNSの発信なども見ていて、経沢さんは『コトの重大性が本当にわかっているのだろうか』と感じることはありました。取材時の印象としても、言葉が軽く、会社全体としても切迫感が感じられない。事業に対する熱い思いはわかるのですが、わいせつ事件や世の中からの批判に対しては、自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません。だから、不祥事も報道や外部からの指摘があってから、後手後手で対応することになる。自分たちの組織を自分たちの手でよくしていこうという自浄作用が働いていないことは、大きな問題だと思います」(同)

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