残された手段は、「ワクチン大臣」で人気を回復させた末の解散総選挙か…。政治ジャーナリストの野上忠興氏と角谷浩一氏に衆院選全国289選挙区の当落を予測してもらった。今回は九州、沖縄について。
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全体的に自民の勢力が強い九州だが、自民大物議員たちの「代理戦争」となりそうなのが福岡5区だ。原田義昭前環境相が引退して自民県議の栗原渉氏が後継になるとみられていたが、原田氏が次期衆院選も出馬と態度を豹変した。
昨年末には自民の山口泰明選対委員長が自ら福岡に乗り込み、「原田氏を次期衆院選に公認する。その次の衆院選では、栗原氏を後継とする」という調停案を示して収拾をはかっている。地元議員がこう語る。
「地元では引退の意向と見られていた原田さんが今回、公認されたのは、山崎派を裏切って麻生太郎氏についたから。一方、麻生氏とソリが合わない古賀誠氏は栗原さんを推していました」
福岡では武田良太総務相ら二階派も勢力を拡大しており、火種がくすぶっているという。
「栗原氏は二階派とも近いという話もありますから、麻生氏も必死。このままでは栗原氏が無所属で出馬することも十分、あり得る」(自民幹部)
沖縄は野党が強い。自民党は巻き返しを図りたいが、1区では自民の国場幸之助氏と、自民への復党を求めている無所属の下地幹郎氏がぶつかりそうな情勢だ。
「前回の衆院選では共産の赤嶺政賢氏の得票が約6万票だったのに対し、国場氏、下地氏を合わせると8万票。保守統一候補を出せば勝てる選挙区なのは皆わかっている。しかし、その調整を沖縄県連がうまくできませんね」(自民幹部)
国場氏は過去2度続けて比例復活当選で、自民の規則では次期衆院選では重複立候補ができない。そこで菅首相と親しい下地氏を復党させて自民の候補にとの声もあり、地元企業でも下地氏の復党を求める署名活動が行われているという。
全国各地で目立つのは、派閥の勢力争いを背景とした与党系候補者同士の果てなき内紛。野党も存在感が薄いままで、与党「自滅」の好機を生かせていない。コロナ禍で多くの日本国民が窮地に追いやられる中、仕事をしない国会議員には退場してもらわねばならない。次の総選挙こそが、その最大のチャンスだ。(本誌・亀井洋志、上田耕司/今西憲之)
※週刊朝日 2021年2月5日号