志望校に合格したらバラ色の人生が待っている?※写真はイメージです(Getty Images)
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 第一志望校に合格できるのは3割とも言われる中学受験。その狭き門をくぐりぬけたらば、幸せな学校生活が保証されるのでしょうか。結果的に志望校が子どもに合わなかったというケースは実際にある話です。受験後の子どもたちの姿から見えてくる「中学受験」とは。経験者のママライターがレポートします。

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「名門進学校というブランドにこだわったことを、今となっては後悔しています」

 このように語るのは、2年前に息子の中学受験を経験した男性Aさん。

 息子のB君は持ち偏差値より5ポイント上の「チャレンジ校」に合格し、大喜びをしたAさん一家。Aさんが職場で同僚たちにその結果を報告すると、「名門じゃないですか!すごいですね!」とうらやましがられ、鼻が高かったと言います。

 そのチャレンジ校の新しい制服に身を包んだわが子を見ると誇らしく、Aさんは内心「これで息子の将来も安泰だ」と早くも子育ての肩の荷が下りたような気持ちでいました。
 
 いざ、学校生活が始まってみると、B君は「授業のスピードが速いんだけど……。でも、みんなわかってるみたい」と不安な気持ちを口にしました。それでも父親のAさんは「そりゃそうだろう。賢い子たちばかりだからな! お前も負けないように頑張れ」と、さほど深刻に捉えていませんでした。

 初回の中間テストの結果は、約200人中180位。Aさんは「最初だから仕方ない、これから挽回だ!」と励ましたが、B君は「勝てっこない」とすでに諦めモードでした。以降、成績はジリジリと後退。B君は小学校や塾では“できる組”にいたプライドを砕かれて、「どうせ俺なんか」というフレーズが多くなっていきました。

 そして、「学校がつまらない」と部屋に閉じこもりがちになってしまったのです。さすがにAさんは「これはまずい」と感じ、塾に行くことを提案。それに対し、B君は「どうせやってもかなわない」と拒否しました。何に対しても覇気がなくなったB君。Aさん夫婦は「どうしたものか」と困っていたところ、ついにB君は朝部屋から起きてこなくなり、登校を拒否するようになってしまいました。

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志望校は親の願望だった