左からデヴィッド・ボウイ、ジャック・トンプソン、大島渚監督、坂本龍一。第36回カンヌ国際映画祭で。1983年(c)大島渚プロダクション
左からデヴィッド・ボウイ、ジャック・トンプソン、大島渚監督、坂本龍一。第36回カンヌ国際映画祭で。1983年(c)大島渚プロダクション
「戦メリ」のロケ撮影が行われた南太平洋クック諸島のラロトンガ島の地図(c)大島渚プロダクション
「戦メリ」のロケ撮影が行われた南太平洋クック諸島のラロトンガ島の地図(c)大島渚プロダクション

「戦メリ」で坂本とたけしをキャスティングしたことは、その後の坂本の映画音楽作曲家としての活躍(「ラストエンペラー」でアカデミー賞作曲賞を受賞)や北野武としての映画監督としての活躍(「HANA-BI」でベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞)へとつながっていく。その背景には「一に素人、二に歌うたい」という大島独自のキャスティング哲学があった。自分の世界観を刺激的に外に開いてくれる存在を常に求めていたという大島監督。その現場には常に“ハッピーアクシデント”とでもいうべき偶然が到来した。

「現場ではこまごました指示など一切しない。各パートの創意工夫が自分の指示の範囲におさまってしまうのを嫌い、豊かに裏切ってほしいと思っていた。現場は、やりたい放題の美術監督(戸田重昌)や、勝手にカメラを置いて撮影しだす鬼才カメラマン(成島東一郎)などが縦横に活躍していました。坂本さんやたけしさんにも同じことを期待していたと思います」

■膨大な資料から新たな発見が

 国立映画アーカイブでは4月に大島監督の資料展示と作品上映を予定している。事務所や自宅に残されていた膨大な紙資料の整理に関わる主任研究員の岡田秀則さんはこう語る。

「資料の山を前にすると、大島が大変なエネルギーを傾けて資料を残していたことがわかります。特に貴重なのは、まったく残っていないと思われていた美術監督の戸田重昌関連の資料です。恐るべき発想の斬新さを目の当たりにしました」

『大島渚全映画秘蔵資料集成』に収録されている資料の現物のほか、貴重な海外版のポスターも展示予定だ。企画展示を担当する特定研究員の藤原征生さんによると、「大島渚の映画人としての足跡を辿(たど)る内容になると思います。林光や眞鍋理一郎、坂本龍一さんの音楽も聴けるようにしたいと思っています」。

 大島監督といえば、映画人としての顔のほかに、発言者としても強烈な印象を残している。

「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日系)のプロデューサー、吉成英夫さんは87年4月の第1回放送からディレクターとして番組に参加。初回放送の打ち合わせの際に初めて監督と対面した。

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