コロナ禍で廃業する店も相次いでいるが、「東京版」で紹介した店の多くが老舗ということもあり、今のところ刊行後に情報更新が必要なケースはないという。むしろ、コロナ禍の波をもろに浴びたのは『地球の歩き方』の事業そのものだった。

 海外旅行ガイドブック事業が壊滅的打撃を受け、今年1月1日付でダイヤモンド・ビッグ社の『地球の歩き方』を中核とする出版やインバウンド事業が学研プラス社に事業譲渡されたのだ。これを受け、1月26日に新たな版元から発行された「東京版」の「初版1刷」は、前の版元から通算8刷目に当たるという変則的な状況になった。

 そんな中、コロナ後を見据えた動きも始まっている。

 今春をめどに、中国語訳版の中国での発売が決まっているという。そうなれば近い将来、『地球の歩き方』を手に東京の街を歩く海外の人たちを見かけることになりそうだ。それはきっと、コロナ禍の終焉を象徴する光景の一つになるに違いない。(編集部・渡辺豪)

AERA 2021年2月22日号