

「森発言」問題には多くの声が上がった。それは、職場などでも同じ空気を感じたことがあるから。「男性」「年長者」だから意見が通る。そんなことからはもう脱却しなければならない。AERA 2021年3月1日号では、女性たちが直面する問題を取材した。
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都内在住の40代女性は、30代の頃、50代の男性社長と2人だけのデザイン事務所に勤務していた。この男性社長のアシスタントだったが、前任者もそのまた前任者も結婚退社していた。
社長と一緒にクライアントとの打ち合わせに行くとき、毎回こう言われた。
「あなたはしゃべらなくていいからね」
だから、いつも黙っていた。しかし、クライアントは若い人の感覚が知りたいから、と女性に質問することがあった。その意見が採用されると、社長は明らかに不機嫌になった。
■経験した怒りと悔しさ
何年か仕事をするうちに、自分を指名して仕事をくれるクライアントが現れた。社長が面白くなさそうな顔をしていた。嫉妬を感じてつくづく嫌になり、退社、独立したという。
「女性が多い会議は時間がかかる」などと女性差別発言をし、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長を辞任した森喜朗氏。「(女性理事を選ぶのは)文科省がうるさく言うから」という趣旨の発言もあり、ダイバーシティーの採用が形式的で受け身のものだったことも露呈した。だが、このような意識や組織運営は森氏の周りに限ったことではない。多くの人が日々、職場などで実感していることだ。
だから、SNSなどで多くの声が上がった。
スウェーデンのヨーテボリ大学で公衆衛生を学ぶ大学院生の福田和子さんは、森氏の発言を聞いた日の夜11時頃に音声SNSのClubhouseでルームを立ち上げた。
「世界的にジェンダー平等が言われている中で組織委員会の会長がこういう発言をしたことに衝撃を受けました。一人でモヤモヤしていてつらいなと思ったので、思い立って10分くらいでルームを立ち上げてみたんです」