お遍路結願という『前猫未到』の偉業を成し遂げたのは、徳島県に暮らすこよみとゆき。飼い主の夜行さんと一緒に、約1年をかけて四国八十八カ所を踏破した。共に生きる1人と2にゃんの願いとは。AERA臨時増刊「NyAERA2021」特集「人生を変えた猫」から。
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■にゃんこも白衣に遍路笠
75番札所の善通寺・五重塔を背景に、白衣に遍路笠を身に着け寄り添っているのは、サバトラのこよみ(9歳、メス)と白猫のゆき(8歳、メス)だ。飼い主の夜行さんと一緒にお遍路を結願した、たぶん史上初だろう猫だ。
猫のお遍路さんは、2017年9月18日に、1番札所・徳島県の霊山寺からスタート。およそ1年をかけて、飼い主の夜行さんと共に四国八十八カ所を旅した。
夜行さんがこよみを保護したのは9年前だ。近所の空き家で見つかった子猫の一匹で、300gほどの手乗りサイズだった。
「無事に育ってくれるか、毎日心配でした」(夜行さん、以下同)
猫と暮らすのは初めてだったが、人懐こくて愛くるしいこよみに魅了された。いろいろな世界を見せてあげたくて、ペット用のカートを用意し、休みのたびに一緒に出かけた。1年後には1歳年下のゆきを保護した。
■一緒に地元を応援したい
2匹との暮らしは幸せいっぱいだったが、一方で、地元・徳島に対する問題意識も感じていた。若者は大都市に行き、高齢化が進んでいる。6年を大阪で過ごして戻ってきた夜行さんには、徳島の魅力が前よりはっきりわかる。行政も地方創生に尽力しているが、自分たちにもできることがあるはずだ。
「町おこしを、一緒にできないか考えたんです」
地元・徳島を元気にすることは、夜行さんとこよみ&ゆきの願いになった。
人々と触れ合いながら、18年10月21日、88番札所の大窪寺に到着。翌年5月には、フェリーで和歌山県に渡り、高野山へお礼参りも果たした。11月からは、感謝を込めて88番札所からまわる逆打ちを始めた。御利益が3倍になるともいわれるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一時中断を余儀なくされた。
「多くの人にこよみとゆきを見てもらって、自由に写真を撮ってもらいたい。一緒に、徳島を元気にしたいと思っています」
■こよみとゆきの「鬼滅のにゃいば」
もうひとつ、夜行さんが注力しているコスプレがある。大人気アニメ「鬼滅の刃」だ。「鬼滅の刃」を製作するUfotableは徳島県にスタジオを持つ。これも、徳島応援の一環だ。
圧巻の完成度を誇る猫衣装の数々は、すべて夜行さんがつくったもの。衣装は製作よりも生地探しに苦労する。竈門炭治郎の羽織の市松模様は模様の数から並びまで設定どおりに再現した自信作だ。
コスプレをしたこよみとゆきは、普段どおりのびのび。出かけた先で、気持ちよくお昼寝してしまうこともあるという。猫に心地よく着てもらうコツは、「肩幅にゆとりをもってデザインすること。肩が窮屈だと動きづらいんです」(夜行さん)。
こよみとゆきがお遍路に行った理由と道中の物語は、発売中のAERA臨時増刊「NyAERA2021」をご覧ください!
(編集部・熊澤志保)