「東日本大震災時や就職氷河期の若年層にも、その世代特有の問題はありました。ただ、コロナ禍ではそれが顕在化しづらい。震災などの災厄とは違うレベルで孤立化が進んでいると感じます」(富永さん)

 若者たちが抱く将来への不安も少しずつ表面化している。

「できるものなら1年を返してほしい」

 そう話すのは、「若者全般の意見ではない」とした上で取材に応じた20歳の大学生だ。

■自粛の「見返り」どこに

 本来なら、今年は成人式で久しぶりに会う友人たちと楽しい時間を過ごすはずだった。だが、式は中止になり、その後に予定していた同窓会もなくなった。

「成人式の後に同窓会があるかないかは、今後開かれる同窓会にも影響します。私たちの代は、将来音信不通になったり、生死不明の同級生が増えたりするのではないかと思います」

 この学生にとって、20歳の節目となる年は、「人生で一番楽しかったはずの大学2年生」。その時期を思うように過ごせなかったことが、悔しかった。

「当事者しかわからないかもしれませんが、18~30歳くらいの世代とそれより上の大人の1年は遥かに重みが違います。なのに、どうして『最近の若者は』なんて言う人たちのために我慢しなければいけないのか。『見返りは?』というのが本音です」

「見返り」というと、自分勝手に聞こえるだろうか。だが、そうした感情を持つ人は少なくないようだ。心療内科医の海原純子さん(68)は、若年世代が受けた教育の影響を指摘する。

「診察していて感じるのは、大学入試や就職といった『目標』が掲げられ、その結果のために行動を求められ、行動してきた世代だということです」

 前出の富永さんは言う。

「若い世代と年長世代の見返りへの感覚は大きく異なります。我慢という形で貢献すれば、安全になった社会で楽しさを享受できるというのが年長世代の考える見返りです。ただ、若い世代からすれば、楽しさは本当に享受できるのかと疑ってしまうほど、社会の展望が見えない状況です」

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