慶応義塾大学と東京歯科大学が、合併の協議を始めることを2020年11月に発表しました。合併が成立し、慶応大歯学部ができれば受験生の間で話題になりそうです。ただ、歯学部の実態は医学部に比べると、あまり知られていないもの。そこで、歯学部受験を考えている人に向け、歯学部の選び方について、自身の娘も歯科医師という若林健史歯科医師にうかがいました。
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慶応大と東京歯科大は昔から交流があり、合併については以前からうわさがありましたが、一報を聞いたときにはやはり、驚きました。私の周囲の東京歯科大出身者は合併に歓迎ムードです。個人的にはこの合併をきっかけに、歯学部に注目が集まり、歯科医師人気が復活することを願っています。
さて、では、歯学部受験を考えた時、どのようなポイントで大学を選ぶべきでしょうか。実は我が家は長女も歯学部を卒業し、歯科医師として働いています。そうしたこともあり、今回は歯科医師の立場だけでなく、親目線でもアドバイスができればと思います。
まず、親としては経済的な理由から、当然ながら、国公立大の歯学部を目標にしてほしいです。私立大の歯学部は一部に特待生制度などがあるものの、学費は医学部よりも高額で、6年間で3000万円を超えるところが少なくありません。
歯科医師の間で、「国公立の歯学部に入ったら、子どもにフェラーリを買ってやる(そう子どもに言って、やる気を出させる)」という話がよく言われます。これはけっこう真面目な話です。実際、子どもを簡単に私立大の歯学部に入れられるほど余裕のある歯科医師はそう多くありません。私立に行かせるよりも、国公立に入れてフェラーリを買ったほうが(車のモデルによりますが)、出費は少なくすむので、「国公立に入れるものなら入ってほしい」というのは切実な願いなのです。
とはいえ、国公立大は定員も少なく、偏差値もかなり高い。そう簡単に合格はできません。
では、私立大で考える場合、どのような基準で大学を選べばいいのかといえば、間違いなく、「歯科医師国家試験の合格率が高い大学」です。
国は「歯科医師過剰問題」の解消のために、歯学部の定員を減らし、さらに出口である歯科医師国家試験の合格率を下げています。2020年の合格率は65.6%で、3人に1人は浪人になってしまうという計算。浪人生の多くが国家試験のための予備校に通っています。ただし、「卒後、3年以内でなければ合格は難しい」と言うのが定説です。
だからこそ、現役での国家試験合格をめざさないといけないのですが、合格率の高い大学はそのための対策を徹底しています。