まだある。河井克行元法相夫妻のスキャンダルにしても、広島の参院議員は自民党の溝手顕正氏と旧民主党系でバランスが取れていた。ところが、自民党幹部が「溝手は安倍首相の批判をしてけしからん」と、自民党の広島県連の反対を押し切って河井案里氏を出馬させた。さらに県の有力者たちに、強引に案里氏に投票させるためにむちゃくちゃに金をばらまかざるを得なかった。

 なぜ、このようなバカげたことに自民党国会議員から何の声も出なかったのか。

 自民党議員、そして官僚たちがたるみきっている理由は二つ。

 一つには、残念ながら野党が弱すぎることだ。米国ではトランプ前大統領が落選した。その意味では、米国の政治には緊張感がある。だから投票率も高い。

 もう一つは、小選挙区制になったことだ。このために党執行部によって公認されないと当選できず、誰もが安倍、菅両首相の完全なイエスマンになってしまった。そして、内閣人事局制度によって、官僚たちが主体性も誇りも失った。惨憺たるこの国をどうすれば立ち直らせることができるのか。

週刊朝日  2021年3月19日号

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 

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