いや~暑かった。そして暑かった。なおかつ暑かった。監督の陣内孝則さんは「役者だけに暑い思いはさせられない!」と颯爽とジャケットを着て撮影にのぞみましたが、2カットくらい撮った時点で脱いでました。

 映画「大洗にも星はふるなり」。2009年の作品。真冬。大洗の海岸。短パン。アロハ。そして信じがたいことに、雨ふらし(この言葉は業界用語かもしれません。要するに専用の機材などを使い、大量の雨を人為的に降らせることです)。

 いや~寒かった。そして寒かった。なおかつ寒かった。やっとの思いで撮影を終え、マッハの速度で暖を取ろうとしたら助監督から「まだ二朗さんのヨリがあります!」の声。ヨリというのは、まあ、分かりやすく言いますと、その人のアップということですかね。課長Aや刑事1的な役を長くやってきた僕なんぞは、このヨリを撮ってもらうようになるまで何年も掛かったわけです。その僕が後にも先にもこの時だけは叫びました。「ヨリはいらねえ!」。

 とまあ、暑さと寒さの金字塔の2作品を記したわけですが、いずれの現場も氷のうやベンチコートを持って役者のケアに全力を尽くしてくれたスタッフさんたちには、本当に感謝の一語だし、弱っちい僕が、肉体労働の役者をなんとかここまで続けてこられたのも、そういうスタッフさんたちのおかげだなぁと、改めて感じたわけでございます。

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける。原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)が6/4(金)全国公開。

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