「働き手からすると、長く続けてきたやり方や人間関係のなかで仕事を続けたいと考える人は多い。一方で、新しいアイデアを出したり、ビジネスツールを使いこなしたりするなど、企業にとって必要な能力は若い世代のほうが高い。もちろん、シニアにも豊富な実務経験や組織の運営・管理能力といった優れたスキルはあります。でも、シニアの全員が企業の求める人材にあてはまるわけではない。企業に残りたいなら、会社が求める技術やスキルを身につける必要があります」
いったい、どんなシニアが求められるのか。
中島さんや小島さん、人事担当者らの意見を参考に、転職や再雇用がうまくいくためのチェックリストをつくった。70歳まで働き抜くためのヒントにしてもらいたい。
まず重要なのが、定年後の人生設計をしっかりと描いておくことだ。同時に、自分の強みや弱みもきちんと把握する。人材育成の経験もあり、現在は投資・金融教育に携わる東京証券取引所金融リテラシーサポート部の増田剛さんは、一度キャリアなどを振り返って自分自身の“棚卸し”をすることを勧める。
「今までに培った経験や人脈、資格や能力だけでなく、家計や資産の状態まで棚卸ししてみましょう。すると、自分は現時点で何ができて、できないか、さらに老後に必要なお金も『見える化』できます。その結果、これからどんな資格や能力を身につけたらよいか、どれだけ働けばいいかがつかめる。老後の支出がイメージできれば、無理な働きすぎを防ぐことにもつながります。65歳で定年になっても、人生はまだ30~40年あります。焦らずにじっくりと必要なことに取り組むよう心がけましょう」
自分の“市場価値”を把握するうえで欠かせないのが、志望する会社や職場が何を求めているかを知ることだ。
「現在のシニア世代は、同じ会社に長く勤めてきたケースが多く、就職や転職活動をすること自体、久しぶりという人が少なくありません。業界や人事制度の動向をしっかりと調べて、自分の価値を見極める努力が必要です」(シニアジョブの中島さん)