言葉や態度による精神的暴力や、嫌がらせを示す「モラハラ」。長年の結婚生活で、夫や妻の言動で傷ついてきた、不愉快な思いをしてきたことが、実はモラハラだったということが非常に多いという。長びくコロナ自粛で顕在化することもある。
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新型コロナウイルスの影響で夫婦での在宅時間が増えたことで、相手の言動にイライラしている人も少なくない。
多くの女性から離婚相談を受けている丸の内ソレイユ法律事務所では7年前からモラハラ(=モラルハラスメント)の相談件数が増えたという。代表の中里妃沙子弁護士は、コロナ禍でのモラハラ相談について、自粛中にモラハラが発生したのではなく、今までモラハラ状態にあった人が、自粛生活で顕在化しているのではないかと推測する。
「コロナがなければ“3年後に離婚”だったのが、今に早まったような感じ。自粛生活で接触頻度が高くなったことで、モラハラの頻度も高まったのではないでしょうか」
モラハラという言葉は今や“市民権”を得て、これを理由に離婚を考える人が年々増えている。
「幅広い年齢の方が相談に来られます。20~30代は夫婦ともに耐性がなく、自分の価値観どおりに物事が進まないと相手を責め、お互いがモラハラの被害者だと思っている場合が多いですね。婚姻期間が短く、子どもがいないことも多いので、離婚の成立は比較的早いです。一方、60~70代は、『もう夫の身の回りの世話をし続けるのが嫌だ』という女性が相談に来ます」(中里弁護士)
離婚を望んでも、加害者側にはその気がないことが多い。次は調停や裁判だが、モラハラだけを理由に離婚を裁判所に申し立てるのは難しいという。
「民法770条で、裁判で離婚が認められている五つの事由があり、『その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき』がモラハラに該当する可能性がなくはありませんが、認められることはなかなかなくて困難。モラハラは言葉の暴力が主で、証拠を残しにくいんです。四六時中ICレコーダーで録音するわけにもいかず、長期間、克明に日記を書いてようやく認められるくらいです」(同)