文在寅大統領と鄭銀敬・疾病管理庁長官が保健所を訪れ、ワクチン接種のプロセスを視察した/2月26日、ソウル(韓国大統領府/gettyimages)
文在寅大統領と鄭銀敬・疾病管理庁長官が保健所を訪れ、ワクチン接種のプロセスを視察した/2月26日、ソウル(韓国大統領府/gettyimages)
AERA 2021年4月5日号より
AERA 2021年4月5日号より

 日本より9日遅れて新型コロナのワクチン接種が始まった韓国。接種者の数では一時、日本を上回るなど、新型コロナ対策に力を入れている。背後には政治の思惑も見えてくる。AERA 2021年4月5日号から。

【日本と韓国の新型コロナワクチン接種者数はこちら】

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 韓国の新型コロナ対策の最大の推進力になっているのが、文政権が置かれた政治的な状況だ。文政権はワクチン接種だけでなく、3月中に4回目の支援金給付を目指すなど、遮二無二コロナ対策を進めている。

 韓国の政界関係筋は「文政権の関係者らの頭のなかに、1年後に迫った大統領選挙があるのは間違いない」と語る。韓国の政府与党は20年4月の総選挙で議席数の6割を占める大勝利を収めた。これは選挙前に、コロナ感染者数が落ち着き、有権者が文政権のコロナ対策を高く評価したからだとされた。「柳の下の2匹目のドジョウ」を狙いたいというわけだ。

 さらに、文政権を取り巻く政治環境は急速に悪化している。3月、住宅建設や分譲などを担う韓国土地住宅公社の職員らが不正に土地を購入していた疑惑が表面化した。文政権では、ソウルの不動産価格が高騰していた。韓国政府関係者は、世間の空気について「不動産対策が不十分なくせに、甘い汁を吸っていたのかという怒りに満ちている」と語る。4月のソウル市長選も与党不利が伝えられ、大統領選に向け、にわかに暗雲が広がりつつある。そんななか、政府与党が切れるカードは新型コロナ対策しかない。

 日本も韓国も、コロナが政権の命運を握る構図に違いはないようだ。(朝日新聞編集委員・牧野愛博)

AERA 2021年4月5日号より抜粋