ただ、嫌いな人間を思いっきり演じられる楽しさがありました。悪役を演じる楽しさに近いかもしれませんね。それと今回はメイクも結構、楽しんでやっていて。和物だからこそ逆に「洋」のテイストを入れたくて、アイメイクは自分の中でデヴィッド・ボウイをイメージしてやっています。

 千里丸は自分と同じように異能を持つ人々と出会い、初恋も経験することで、初めて「自分は何のために生きているのか」という疑問を持つ。それはこの作品の大きなテーマでもある。

戸塚:命あるものは等しく死ぬことだけが決まっている。それなのになぜ生まれるのか、何のために生きていくのか。それが本当に不思議で不思議で、僕自身のテーマでもあります。「生きていること自体を作品にしたい」という思いがあるんです。人生そのものが自分の作品であるというか。だからこそ舞台での表現が好きだし、向いているんだと思いますね。舞台では自分の都合のいい一部を切り取って見せることはできなくて、すべてを見られてしまいますから。

■「ミニジャニーさん」

 ジャニーズJr.の頃からずっと舞台に立ってきた。今回の新橋演舞場、大阪松竹座も馴染みの劇場だ。錦織一清が演出を手掛けたつかこうへい作品で何度か主演を務め、様々なことを学んだ場所でもある。

戸塚:稽古場から劇場に入ったとき、みんなに「テンションが上がった。今までと全然違う」と言われて。自分の中でギアを変えたつもりはないから不思議だったんですけど、やっぱりその場所によって自分の感覚も変わるんでしょうね。あのときジャニーさんにこう言われたなぁとか、錦織さんなら多分こうやれって言うだろうなぁ、とか自然と湧きあがってくるものがあって。自分の中に「ミニジャニーさん」とか「ミニ錦織さん」がいるんでしょうね(笑)。ただ、僕自身は強いリーダーシップで統率していくタイプの座長ではない。気をつけていることは、風通しを良くすることと、とにかくずっとヘラヘラしていること(笑)。素は本当に根暗で、そのまんまでいると空気をどんよりさせちゃうから。言葉というよりは全員としっかりアイコンタクトを取って、相手をどこまでも信頼して、いい舞台を作り上げたいです。

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