※写真はイメージです (GettyImages)
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食道がんデータ (週刊朝日2021年4月9日号より)
食道がんデータ (週刊朝日2021年4月9日号より)
食道がんの部位ごとの分類 (週刊朝日2021年4月9日号より)
食道がんの部位ごとの分類 (週刊朝日2021年4月9日号より)

 食道がんの発症にはアルコールが深く関与している。最も危険なのは飲むと顔が赤くなる人だ。新型コロナウイルスの影響で自宅での飲酒機会が増えている。飲みすぎの自覚がある人は予防策や早期発見について知っておこう。

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 食道がんは咽頭(喉)から胃の入り口を結ぶ食道にできる。食道の壁は4ミリと薄く、周囲には肺や気管など多くの臓器やリンパ節がある。このため早い段階から転移しやすい。

 できる場所によって大きく頸部食道がん、胸部食道がん、腹部食道がんに分類される。日本人の症例のうち8~9割は胸部食道がんだ。なお、頸部と胸部の食道がんは扁平上皮がんというタイプが多く、代表的な危険因子はアルコールと喫煙。腹部食道がんは腺がんが多く、胃食道逆流症で食道の粘膜に起こる異変(バレット食道)が危険因子だ。腹部食道がんは食事の欧米化にともなって増えているという報告もある。

 頸部と胸部の食道がんは特にアルコールの影響が大きい。飲酒習慣があり、「飲むと顔が赤くなる人(フラッシャーという)」が最も危険だ。大阪国際がんセンター消化管内科の石原立医師はこう話す。

「患者さんの8割程度はフラッシャー。食道がんに関係するアルコール分解酵素はアルコール脱水素酵素(ADH1B)と、アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の2種類です。遺伝的に活性の程度が決まっており、二つとも活性が低いと、より発症しやすいのです」

 アルコールを飲むと代謝の過程でアセトアルデヒドという発がん物質ができる。二日酔いや動悸、顔が赤くなる原因になる。分解酵素の活性が低いとアセトアルデヒドが長時間、体内に蓄積されやすくなり、食道がんの発症リスクを高める。

 江戸川病院外科の中島康晃医師も言う。

「特に注意したいのは若いころは赤くなったけれど、飲んでいるうちに大丈夫になってきた人です。お酒に慣れたのは遺伝と関連のない他の酵素の影響などで、アルコール分解酵素は正常になっていません。こうした人は飲む量が増えた結果、アセトアルデヒドに暴露される機会がむしろ増えているのです」

 石原医師は食道がん予防として、未成年のうちに2種の分解酵素を調べ、自分の体質を知っておくことをすすめている。

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