大阪府東大阪市の近畿大学では、1年生からキャリアについて考える授業を行っている。まずは、働くことの意味などを考えるところから始まる(撮影/前田博史)
大阪府東大阪市の近畿大学では、1年生からキャリアについて考える授業を行っている。まずは、働くことの意味などを考えるところから始まる(撮影/前田博史)
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グループワークで手を動かすことで、1年生は初めて就職活動を自分のこととして意識した様子。ディスカッションの合間に笑顔がこぼれる(撮影/前田博史)
グループワークで手を動かすことで、1年生は初めて就職活動を自分のこととして意識した様子。ディスカッションの合間に笑顔がこぼれる(撮影/前田博史)

 就職の広報活動解禁時期がまた変わる。安倍首相が経団連などの首脳に、大学3年生の12月から翌年3月に遅らせるよう要請し、経済界側がこれを受け入れた。2016年卒、つまり現2年生からこのスケジュールで活動をすることになる。それに伴って、選考活動の開始も4年の4月から8月に変更される。解禁時期は、13年卒学生の就職活動時に3年の10月から12月になったばかりなので、さらに後ろ倒しが進んだ形だ。

「学業に専念できる時間が増える」
「留学に行きやすいスケジュールになった」

 など、大学や学生の間で変更に肯定的な意見もある。しかし、それで本当に学業に専念できると考える学生が多いとは言えないようだ。マイナビの調査によると、留学をした、もしくは検討した学生が障害と感じたのは、1位が「経済的な負担が大きい」で約68%。2位の「国内の就職活動に間に合わなくなる」と答えた人はその3分の1以下だった。

 それどころか、今回のスケジュール変更でダイレクトに学業にあおりを受ける学生もいる。

 たとえば、理系大学生の場合、一般的なスケジュールだと4年の4月ごろに研究テーマを決め、5月から8月がテーマに沿った実験や実習に取り組む時期になる。今までのスケジュールであれば、就職が決まってから研究をすることができたが、新しいスケジュールでは研究が最も忙しい時期と就職活動の時期が重なってしまう。

 また、夏休みに合宿をすることが多い体育会系の学生なども部活と就活が重なり、影響を受けやすい。就職活動に詳しいマイナビの栗田卓也氏はこう話す。

「夏は企業のサマーインターンシップが盛んな時期。受け入れ先は人事部であることが多く、彼らが採用活動に奔走する時期と重なったら、そもそもインターンシップの時期やありかたにも影響が出てくるでしょう」

AERA 2013年5月27日号