住宅の前からコインパーキングまで、いたるところでみられるこうした風景が「現実」を物語る。

 先の女性は「私だって、本当はこんなこと(観光客への注意)をしたいわけじゃないですよ」と疲れ切った顔で話す。

「3年くらい前から一気にひどくなりました。私の自宅周辺では、立ち食いだけではなく、敷地内のカースペースなどに座り込んで食べたり、たばこを吸ったりする人が後を絶たず、食べこぼしやごみのポイ捨ては日常茶飯事です。やむなく敷地の一部に蛇腹の柵を設置したのですが、柵をちょっと開けて隙間に座り込んで食べる人までいました。近くのアパートでは、日陰に入りたいからと通路に勝手に入って立ち食いして、そのごみをポイ捨てされたこともありました」

 こうした被害は日中だけにとどまらないという。

「深夜に酔っ払いが住宅地で騒いだり、家の敷地に嘔吐されたことが何度もあります。新型コロナウイルスが大きな問題となっているこの時期、こうしたリスクを伴う汚物やごみを掃除するのは、ずっと静かに暮らしてきた私たち住人です」

 事実、女性が立っていたのとは違う路地を見ると、立ち食い客や路上たばこを吸う人が次々に入ってきて、去った後にはごみや吸い殻が残されていた。飲食店の店員が座り込んでたばこを吸っていることもあった。ちなみに、新宿区は条例で路上喫煙は禁止されている。

 喫煙していた中年女性に声をかけたが、

「喫煙所が見当たらないし、歩道だと(火が)危ないからこっちで吸ってます」

 とそっけなく答えるだけだった。またアパートの前でハットグを立ち食いしながらマスクを外しておしゃべりしていた大学生カップルは、

「ごみを捨てちゃだめですけど、歩道が混んでるから、とりあえずはこっちに来ちゃいますよね」

 罪悪感はさほどないようだった。

 そばを歩いていた住民男性は「昔は静かな住宅地だった。変わっちゃったよね。これが自分たちが生きてきた街なのかなあと思いますよ」と彼らに目をやりながら、さみしそうに本音を語った。

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注意すると「お前らの土地じゃないだろう」