砂漠や岩山が延々と続く景色の中、急に雪山が現れたときは、違う惑星に来たかと思いました。雪が残っているのに晴れているし、寒くないし、人は誰もいないし。

 いい景色があるとモニカが私を撮影していたんですが、なんかカメラの前でも脱ぎたくなったんですよね。モニカも「もう脱げば!?」って言うから、「ああ、脱ごうか!」みたいな感じ。自分たちを制限するものは何もないし、本当に自由な気持ちでした。

 素晴らしい写真がたくさん撮れたんですが、最初、写真集を出すことは考えられませんでした。モニカはずっと「私の最高傑作なんだから出そうよ」と言ってたし、私も出したいけど、これは出せないなと思っていた。私が裸になっている写真集を出すとなったら、何か突拍子もないものとして捉えられ、このピュアな気持ちは人に伝わらないんじゃないかと思っていました。

■生命力がみなぎる感じ

水原:ヌードというと、女性の場合、覚悟をもって脱いだというイメージを持たれてしまうことが多い。男性目線で作られることも多いし、昔、「ヌード写真集を出したら仕事なくなるよ」と言われたこともあって、タブーなんだと思っていました。

 でも、世界中でコロナが起きたとき、生死をものすごく意識したんです。時間は無限にあるような気がしていたけど、そうじゃない。明日何が起きるか分からないのに、自分の中のクリエーティブな意欲や、表現したい気持ちを抑え込んじゃったらもったいないと、生命力がみなぎってくる感じがしました。写真集を出すなら、今のこのタイミングしかないと思ったんです。

 この写真集にはヌードもあるけれど、人間は自然の一部なんだという気持ちを伝えられたらいいなと思っていますし、セクシュアルなものとは違う。女性の裸体に対してのある種のイメージや視点を、ポジティブに変えるものになっているんじゃないかなと思います。

——写真集以外にも、女性の見えない階層社会が描かれた映画「あのこは貴族」や、好きだった女性の夫を殺害する同性愛者の役を演じた映画「彼女」など、水原さんの最近の活動は女性の世界を描いた作品が多い。あえてそういう作品を選んでいるのだろうか。

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