シドニーの幼稚園には、さまざまな国籍の子どもが通っていた。さっきまで親と韓国語で話していた子が、先生と英語で話す姿を見て「バイリンガルはこうして育つのか」と妙に感動したそうだ。
「でも最初の2週間は余裕ゼロでしたよ。一番ショックだったのは、3歳の子より英語が話せないという事実。学校で10年間英語を勉強してきた意味は?って感じました」
でも、そこでくじけないのが川島さん。「話せないということは、伸びしろがあるってことだ!」と、がぜんやる気がわいたという。
「自分から積極的に話しかけるようにしたおかげで、3週目には、子どもたちの会話についていけるようになりました」
3度の海外体験を経たことで、川島さんは「言語を学ぶ意味」を改めて考えるようになったという。
「どんな言語でも、使う人にとっては人生を支える軸ですよね。それを学ぶということは、誰かの人生に近づき、寄り添い、理解するということ。『言葉の壁』という言い方がありますが、壁じゃない。言葉は、気持ちを届け、受けとるためのチケット。人とつながることが英語を学ぶ最大の理由なんじゃないかな」
そんな思いに背中を押され、手話や点字も習い始めている川島さん。
「いろんな『言葉』を使って、広くトラジャの存在を伝えたいし、ぼくらの思いを届けたい。それがアイドルとしてのすそ野を広げることにもなると思っています」
■過去の自分よりも成長していたいから
最近は英語とクイズの勉強をリンクさせることも多いとか。たとえば「number」という単語。スペルのどこにもoはないのに、なぜNo.と略すのか?と疑問を持った。
「調べると、numberの語源はラテン語のnumeroだった。その最初と最後のアルファベットをつなげると、No.になるというわけです」
先日は家電量販店で「RF(ラジオ波)」という文字を見た。「Rはradio だろうけどFってなんだ?」。調べてみたら“radio frequency”の略だとわかった。
「まず自分で考えてから調べることにしているんです。そのほうが、理解は深まる気がします」
あくなき好奇心と探求心。学びのモチベーションはどこから生まれるのですか?と質問すると、「過去の自分かな?」と答えてくれた。「以前の自分と比べて、ここは伸びた、ここはまだダメ、でも過去の自分のここはいいから踏襲しよう……そんなふうに振り返るんです。黒歴史もいっぱいあるんですが(笑)、それも含めて全部自分。丸ごと受け入れて、もっと伸ばしていきたいんです」
◆川島如恵留(かわしま・のえる)
1994 年東京都生まれ。アイドルグループ「Travis Japan(ジャニーズJr.)」のメンバー。青山学院大学総合文化政策学部卒。ジャニーズで初めて宅地建物取引士(宅建)の資格をとる。阿部亮平さん率いる「ジャニーズクイズ部」の一員として、クイズ番組でも活躍中。
(文/神素子)
※「AERA English 2021 Spring & Summer」より