「ミャンマーの未来は、あなたたち若者がつくるんです、みんなで団結することが大事ですと伝えました。その気持ちに応えてくれて、ミャンマーの未来を考える若者のネットワークができました。その中から国会議員も出ました」と話し、スマホの写真を見せてくれた。クーデターによりミャンマー軍が設立した連邦行政評議会に対抗して組織した臨時政府(CRPH)の議員たちが軟禁されたときのものだ。
ウィンチョさんは日本の政治にも関心が高い。
「私たちの国はずっと政治が不安定でした。でも、日本は平和。だから政治に無関心になるのかもしれない。日本も安保や学生運動など政治に若者が意見を言い、活動した歴史があります。当時若者だった人は、何を考え行動したかを覚えているはずです。大人たちが若者に教えていかなければならないことがあるはずです」
日本の現況を少し憂えている。日本は60年代、70年代に安保闘争、学園紛争が起こった。今のミャンマーと重なる。
「社会を変えていくのは若者の力です。若者は国の宝なのです」
そう力説する。
「若者は純粋です。そして正しいことは正しいと言うし、自分のことより、社会のこと、国のことを優先します。そんな若者が私は大好きです」
コンセットさんとオガさんがウィンチョさんに話すと、子どもの話を聞くようにうなずく。
「もうひどい歴史を繰り返してはならないのです」
祖国のことになると、声が大きく熱がこもる。
「私は今56歳。でも私の気持ちは当時と同じ。若者のままです」
(本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2021年4月30日号