4月26日、緊急事態宣言下でも通勤・通学客が行き交うJR大阪駅前(c)朝日新聞社
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 東京など4都府県に3度目の緊急事態宣言が出されることが決定した。しかし度重なる宣言に効果を疑問視する声も。加えて、続く自粛生活に心身を疲弊させる人も増えているようだ。AERA 2021年5月3日-5月10日合併号で取材した。

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 ひと口に「外出」といっても目的は様々だ。AERAが実施した「あなたが外出する理由を教えてください」と題したアンケートに寄せられたコメントを見ると、人の数だけ理由がある。

「在宅だと業務効率が落ちるため、毎日時差出勤している。仕事の場合、逆に在宅が増えると冷たい視線を感じる」(福岡県・30代女性会社員)
「狭い家でずっと閉じこもっているのは無理。出るとどこも混んでおり、自分だけ閉じこもっているのはばかばかしく感じる」(東京都・30代男性会社員)
「私はほぼ毎日外出しますが、会社から同僚とのランチすら禁じられていますし、会食はしません。友人と会うのも極力控えています」(東京都・40代女性会社員)
「週2回の買い物ですら、遠方に住む親から『出かけすぎ』と言われた。これ以上減らせるわけがない。在宅勤務なので、基本的に一人で家に閉じこもっていて精神的にめいります」(東京都・40代女性自営業)

 高齢者の認知症やうつ病の外来診療を行う精神科医の和田秀樹氏(60)は、外出を恐れる高齢者が以前より増えたと感じている。その原因は、政府の感染拡大防止策にあるという。

「端的に言うと、感染症学者の作るガイドラインには細やかさがないんですよ。会食するな、外出するな、接触するなと言うのは簡単ですが、その制限によって当然ながら心身に悪影響が出る。そこに対するフォローが抜け落ちているんです」

■守れるルールを作る

 外出自粛をはじめ、感染リスクを抑えるために要請されていることの多くは、人間本来の欲求に反するものだ。だからこそ、自粛しないことによる害と同じくらい、自粛することによる害にも目を向けるべきだという。

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