午後6時半ごろ。JR錦糸町駅近くの繁華街では、一軒の居酒屋に明かりがともっていた。中は満席で超がつく密の状態で、外にまで声が聞こえてくる。ほとんどが若者で、マスク飲みの人はゼロに見えた。

 落ち着いて飲んでいるカップルもいるが、声が裏返り放送禁止用語を連発している若い男性たちもいる。

「ママ!ママ!かわいいママってば。注文お願い」

 酔っぱらったその男性が大声を出すと、女性店員が切り返す。

「あんたのママじゃないよ!」
「ギャハハハ」(男性たち)

 午後8時過ぎ。JR新橋駅界隈に向かった。サラリーマンの聖地だが、祝日とあってさすがに人は少ない。ただ、酒を出している居酒屋はあり、スーツ姿の客がちらほら。

「自粛、自粛っていいかげん、良くないでしょ精神的に、心に。今日も仕事だからね僕ら」

 日本酒を楽しんでいた50代の男性2人はこう話して、街に消えていった。

 別の居酒屋から出てきた中年男性に聞くと、

「あそこは店に入るときに『感染リスク、自己責任』とかいろいろ書いてある紙に署名するんです。身分証見せるわけじゃないので、もちろん偽名でいいんですけどね」

 有楽町や銀座駅界隈も、酒を出してやっている居酒屋がちらほら。ただ、歩く人が少なく、店も新橋同様に満席ではなかった。

 地下鉄銀座駅では、設置されてあるテーブルで、缶入りの酒を飲みながら談笑している若い男女のグループがいた。ただ、全員マスクをつけ、静かに話している。

 午後10時半。再び上野駅に降り立つと、あたりは土砂降りだった。夕方訪れた界隈に向かう途中、道路には嘔吐の跡が2カ所。

 夕方は営業していた居酒屋も店を閉じているところが多かったが、まだやっている店も数軒。土砂降りの雨の音と、酔客の大声が入り混じる。
「ラストスパート行ってきます」

 若い男女3人が、店に入っていった。

 もはや、1年前のような緊張感を取り戻すことは難しいようだ。(AERAdot.編集部)