その可能性として考えられるのは、まず、小室さんが勤務していた法律事務所のNY事務所として働く方法だ。そうして法律事務所への生活費の返済を済ませたのち、(1)のように、米国人と一緒に就職活動をして、現地の弁護士事務所やNPOへなどで働くことは可能なのだろうか。
小室さんは、米国の法律専門誌『NY Business Law Journal』で、3月に発刊された最新号も含めて2回論文が掲載されている。また、NY州の弁護士会のコンペで論文が2位に選ばれるなど、実績をあげている。学生の時点では、それなりの評価が得られていそうだが、働くとなると現実はそれほど甘くはないという。
先の法学館の職員は、ハードルが上がる、と話す。
「外国人は就職先の企業に就労ビザを発行してもらう必要があり、ネイティブより不利であることは間違いない」
米雑誌の『U.S. News Law 』が今年3月に発表した法科大学院(ロースクール)のランキング表によると、小室さんが留学したフォーダム大学ロースクールは、全米で35位。昨年より8つ順位が下がった。
外資法律事務所での執務経験を持ち、米国の弁護士事情に詳しい、永田町法律事務所・代表の長谷川裕雅 弁護士がこう解説する。
「米国は日本とは比較にならないほどの学歴社会です。フォーダム大学ロースクールは、イェールやハーバード大学のように『超一流大学』という位置づけではない。新人弁護士でも報酬1000万以上、事務所の共同経営者となるパートナー弁護士ともなれば、1億円と言われる巨大事務所も存在します。しかし、日本人が同じ待遇で 入所できるかは、別の問題です」
小室さんの英語のレベルが非ネイティブとしては仮に一定程度のものであったとしても、ネイティブではない。NY州弁護士として現地で活躍する日本人もいるが、彼らがこなす主な業務は、ビザや許可書の発行などの単純な手続業務がほとんどで、日本で言えば行政書士などに近い。