コロナ不況の中、強さを発揮したのは資格が取れる学部だ。医・看護や教育など従来の学部が改めて注目されている。AERA 2021年5月17日号の記事を紹介。
【表】大学別「人気102社就職者数」徹底調査! 一覧はこちら
* * *
救急救命士役が救急車のサイレン音を口にして登場すると、6人の看護学生が機敏に動き始めた。担架に横たわる人形の脈や呼吸の確認、心臓マッサージの開始、通報者役から患者情報の聞き取り、得られた情報の白板への書き込み──。役割を分担し連携しながら救命措置をする様子を映した動画は、日本赤十字看護大の看護学総合実習の一コマだ。昨年10月に公開後、4万回近く再生された。
同大には看護学部とさいたま看護学部がある。広報担当の川崎修一教授によると、コロナ禍でオープンキャンパス(OC)を開催できなかった昨年、7月から「OCマラソン」と銘打って授業の様子や学生、教員のインタビューなどを公開した。看護師、保健師の国家試験合格率100%などもアピール。コロナ禍で医療現場の逼迫(ひっぱく)が伝えられ志願者数が減るおそれもありながら、1962人の志願者を集め、前年比113%だった。
佐々木幾美学部長は言う。
「良い教育をしている自負はありますが、アピールがうまくできていなかった。近年、広報にも力を入れ始め、さいたま看護学部新設による定員増もありますが、大学全体の志願者数はこの5年で2倍になりました」
河合塾によると、私立大志願者数は前年比86%。それでも看護系は同90%など、資格が取れる学部の落ち込み幅は小さかった。コロナ禍の影響による解雇や雇い止め(見込みを含む)の累積が10万人を超える中、従来の「資格系」学部が見直された形だ。河合塾教育研究開発本部の近藤治顧問が指摘する。
「不況時は安定志向が高まり、就職に強い学部に人気が集まる傾向があります。教育学部の志願者はこの10年減っていましたが、今年は減少幅が小さかったです」
■いち早く対面授業再開
国立教育大のうち、前年比で最も志願者数を増やしたのが京都教育大教育学部だ。142%。志願者数は628人に上った。