それからさらに40年後にあたる2020年の東京開催が、近代五輪史上初の「延期」に。私は「日本五輪史は、返上・ボイコット・延期の魔の40年」と呼んでいます。

 現実問題に話を戻すと、もう東京五輪は「返上」も「中止」も困難な段階にあります。

――IOCが中止を決断しない理由はなんでしょうか。

 開催中止の決定権を持つIOCが一番注視しているのは、開催国の国内事情ではなく、IF(国際競技連盟)やNOC(各国オリンピック委員会)です。これらの団体から中止を求める声が多数上がればIOCは中止を決めるでしょうが、どこも言い出しません。なお、報道を通じた個別の意見は無視します。

 というのも、IOCはスポンサー料と放映権料の財源を得ますが、それがIFやNOCに還元されるという構造があるからです。放映権料についていえば、IOCはアメリカの放送局NBCから2032年までの夏季、冬季6大会の放映権料として総額76億5千万ドルを受け取ることで合意しており、一大会の開催ごとに支払われます。

 無観客の開催になれば、NBCをはじめ世界の契約放送局は歓迎し放映権料を支払います。特にNBCは録画撮りの予定だった開会式を生中継に変更すると表明しています。

――組織委員会は大会に向けて公認スポーツドクター約200人と、看護師約500人を確保しようとしており、医師については約280人の応募があったと報じられています。国内で医療現場がひっ迫するなかで医療従事者を集めることに、批判の声があがっています。

 東京五輪に参加する主要な選手団はチームドクターを連れてきますが、熱中症やケガの治療にはあたれます。ただ、感染症が発生した場合に日本の医療機関と連携して外国人医師も治療にあたるためには法制度上の特例措置が必要です。基本的に、外国人の医師は日本での医師免許がないと医療行為が出来ません。しかし、阪神・淡路大震災や東日本大震災の時は、日本の医師免許を持たない外国人医師に対し、厚労省が緊急避難的措置として医療行為を特例で認めています。

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