慶應義塾大学病院の茂松直之医師(提供写真)
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 がんの3大治療のひとつ・放射線治療。体を切らずに治療できるというメリットがありますが、副作用などに少し不安を抱く人もいるかもしれません。しかし、近年では放射線治療の合併症のリスクは著しく低下しているそうです。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』で専門医に聞きました。

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 がんに放射線を照射して、がん細胞を死滅させる放射線治療。治療に使う放射線には、X線、ガンマ線、電子線などがあり、病院によってはアルファ線やベータ線、陽子線、重粒子線も使用します。最大のメリットは、臓器の形態や機能を温存できることです。

 放射線治療の目的は、治癒を目指す「根治的放射線治療」、術後の再発予防などを目的とする「補助的放射線治療」、症状を和らげるための「緩和的放射線治療」の3つがあります。

 かつては放射線治療で根治を目指せるのはごく一部のがんに限られていました。しかし近年は照射法の飛躍的な進歩により、必要な場所に必要な線量を照射できるようになったり、薬物療法と組み合わせたりすることで、多くのがんで根治を目指せるようになってきました。

 特に放射線治療を中心とした治療で高い治療成績が認められているがんが、頭頸部がん、食道がん、肺がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がんなどです。

 放射線治療は、からだに負担が少ない治療といえるのでしょうか。

 例えば食道がんI期の場合、放射線治療と薬物療法を組み合わせた「化学放射線療法」も選択できます。慶応義塾大学病院放射線治療科教授の茂松直之医師はこう話します。

「手術では食道を切除し、胃を使って食道を再建しなければならないので、術後の食生活に影響が出ます。一方、放射線治療なら、食道をそのまま残せます。高齢者や持病がある人も受けやすく、治療後のQOL(生活の質)を考えると手術に比べてからだにやさしい治療といえます」

 全身麻酔でおこなう手術は入院が必要ですが、放射線治療は外来で、病院滞在時間は1時間程度で実施できます。まとまった休みをとりにくい人にはメリットになります。

 ただし、全体の治療期間は、多くの場合手術より長くなります。根治目的の場合、6~8週間程度かけて実施します。最近は、高精度治療の適用で、1~3週間で治療可能ながんも増えています。

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