滋賀県彦根市の琵琶湖岸でスーツケースの中から白骨化した死体が見つかった事件で、その主は約14年前、大阪府内で起こった「死体なき殺人」の被害者、歯科医院経営の井澤貴生さん(当時38)と5月24日、判明した。
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今回、発見された死体が井澤さんとわかったのは、入れられていた黒いスーツケースが、事件当時と似ていたこと。そこでDNA鑑定を実施し、特定できた。
記者は2007年当時、この「死体なき殺人」を取材し、裁判も傍聴した。
なぜ、14年間も琵琶湖の湖底にスーツケースは沈んでいたのか?
事件のきっかけは琵琶湖にまつわる「都市伝説」だった。京都市内で歯科医院を共同経営していた井澤さんが、行方不明になり、大阪府堺市に住む家族が捜索を依頼したことが事件の発端だった。大阪府警と京都府警が合同で捜査にあたった。その過程で金銭トラブルが判明。薬局経営などしていたA受刑者が詐欺容疑で逮捕された。そこが突破口になり、井澤さん殺害が判明した。
2007年11月8日未明、大阪府吹田市で井澤さんに麻酔薬を混入した栄養ドリンクを飲ませて眠らせている間に、首を絞めて窒息死させた。そして同日午後に琵琶湖に死体を遺棄したことがわかった。井澤さんを殺害した殺人、死体遺棄容疑で六代目山口組の2人の暴力団員、B受刑者とC受刑者も逮捕された。
大阪府警と京都府警は、大量のダイバーを琵琶湖に派遣。大規模な捜査を展開した。
「琵琶湖のあるポイントに死体を沈めたら絶対、発見されないというヤクザもんの間で広まった都市伝説がある。まさに、その場所に井澤さんを遺棄していた。近江八幡市の琵琶湖に浮かぶ沖島周辺だとされ、当時は海底探査ができる機械を出して、捜索した」(当時の捜査関係者)
しかし、死体は発見されないまま、捜索は終了。殺人、殺人未遂で裁判がはじまった。井澤さんと金銭トラブルがあり、殺人の実行行為に及んだA受刑者、B受刑者は「暴力団幹部のC受刑者に命じられ、脅されて、やらざるを得なかった」と主張。