現在仮保釈中のホリエモンこと堀江貴文氏は、いま「テレビがやばい」と指摘する。その理由とは?
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先日福岡で行われた「アドテック九州」というイベントの公開討論会に出席した。2日間のセッションのトリを飾るディスカッションで、テレビとウェブの関係の未来について、地デジ全録画レコーダーの「SPIDER」を開発するPTPという会社の代表の有吉さんと、急遽登壇された元フジテレビプロデューサーで、現在は芸能事務所ワタナベエンターテイメントの代表取締役会長を務める吉田さんなどと熱い議論を繰り広げることになった。
そもそも、このイベントは1990年代後半にアメリカで始まったインターネットマーケティングのイベントで、インターネット黎明期からネット広告事業などに従事していた私としては隔世の感というか、そんなニッチな(?)ジャンルで、しかも福岡での開催でこれだけの規模でやれるのか、とびっくりしたのである。
会場のホールには千人以上が収容され、さらにサテライト会場でも多くの人が見ていたらしい。ポスターには私の顔がデカデカと印刷され、思わず「うわっ」と声が出てしまうくらいだった。
数年前に「アドテック東京」でも少しだけスピーチをしたけど、その時の熱気もものすごいものだった。10年以上前、ちまちまと雑居ビルの片隅でウェブサイトを作っていた身からすれば、とても喜ばしいことなんだけど、なんとなくむずがゆい気持ちになってしまう。こんなにメジャーになっていいのだろうか?
とにかく数千人のインターネットマーケティングに関わる広告主や代理店、ネットサービス運営者や技術者たちが一堂に会して業界の未来について、いろいろ語り合ったのは事実である。
私たちのディスカッションも白熱したものとなった。地デジ全録が当たり前になる時代に、テレビの視聴習慣は変わり、ソーシャルメディアが大きな影響を持ってきている。ニコニコ動画やYouTubeなどの動画配信サービスもインフラが整いつつある。またバラエティー番組やリアルタイム性の強いドキュメンタリー番組は機動性の高いインターネット向きである。
本来潤沢な予算を使って作る高品質のドラマやスポーツのライブ中継はテレビの独壇場であったのだが、クラウドファンディングによって資金を得られるようになったり、あるいはテレビ側の編成の硬直性のせいでスポーツ中継すらライブにできなかったりするケースが散見される。
おそらく急速にネットシフトが始まっているのである。特にここ2年ほどはスマートフォンでの動画視聴は回線のスピードアップで普及率が急上昇している。単純にネットと番組を連携させるのではなく、私はテレビ局のブランドへのフォロワー増加がキーになる、つまり会員化を進めて有料課金を拡大するのがテレビ局の未来をつくると思っていたのだが、一番遅れているのがテレビ局であり、そういう意味でコンテンツ産業としての成長は難しいのではないか。それをインターネットが埋めていくのである。
※週刊朝日 2013年6月28日号