パレスチナ自治区ガザで、イスラエル軍の空爆によって破壊された商業ビル (c)朝日新聞社
パレスチナ自治区ガザで、イスラエル軍の空爆によって破壊された商業ビル (c)朝日新聞社
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AERA 2021年6月7日号より
AERA 2021年6月7日号より

 武力衝突が続いていたイスラエル軍とパレスチナ武装勢力が5月21日、停戦に入った。SNS上には、現地の惨状を伝えるものからイスラエルへの憎悪にあふれる内容まで、さまざまな投稿があふれている。AERA 2021年6月7日号では、そうした現状に心を痛める市民の思いを、現地に住む筆者がつづった。

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 イスラエルの人口は約930万人。その構成は多様だ。ユダヤ系が7割、アラブ系が2割。ユダヤ系にはエチオピアから救出された人たちもいる。北アフリカからの移民は辛口料理を好む。ユダヤ教の戒律を厳格に守る超正統派の大半は兵役を拒否する。外国人労働者は約12万人、アフリカからの難民も数万人に上る。

 政権に批判的な住民も多い。コロナ禍でも続いたネタニヤフ首相の退陣を求めるデモは、旗、ラッパや太鼓を手にする人でごった返し、異次元の熱気だった。強硬派の人々が西岸地区への入植を続ける一方で、共存と平和を求める人たちは「許せない」と話す。パレスチナに対する政府への道義的な憤りから、イスラエルを離れる人もいる。逆に、移り住む人もいる。仕事や結婚のほか、ユダヤ人差別に生きづらさや恐怖を覚えた人たちだ。

「ジェノサイド(集団殺害)」
「植民地化を進める巨悪」

 そうイスラエルを批判するSNS投稿を目にする。ガザ地区と死者数を比べて「圧倒的な力の不均衡」だと非難する記者もいる。だが、現地にいると違う光景が見える。

≪今もまだ震えている。サイレンのたびに涙があふれる≫

 オーストラリアから2年前に移ってきた、テルアビブに住むメイラブ(32)はフェイスブックに書き込んだ。

≪12日夜。夫と居間で生後3カ月の赤ちゃんを寝かしつけているとき、巨大な爆発音が襲った。サイレンが鳴り響き、赤ちゃんを抱いてマンションの階段部へ逃げ込んだ。近所の子どもたちは泣き続け、爆弾が破裂するたびに震え上がった。今も体を休めることができず、考えが止まらない。なによりガザ地区でお母さんたちが感じている恐怖が頭から離れない。逃げ込む場所もなく、我が子を守ることができないなんて≫

 レイチェル(47)はフェイスブックで寄付を募った。

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