特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」が東京・上野の東京国立博物館で開催中だ(*本展は事前予約による日時指定での観覧のみ可能です。今後の諸事情により、会期などが変更される場合もあります。詳細は公式サイトhttps://chojugiga2020.exhibit.jp/でご確認ください)。漫画『ギガタウン 漫符図譜』の作者こうの史代さんに展覧会の見どころを聞き、作者について推理してもらった。
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全長約11メートルに及ぶ絵巻物「鳥獣戯画 甲巻」の原本の前に設置されたのは、東京国立博物館(東京都台東区)初の“ライド”となる「動く歩道」。観客は11メートルの絵の前を、数分かけてゆっくり動いていく歩道の上に立ち、絵のなかに描かれたできごとを流れるように見ることができる。
■目の前を作品が流れる
実際に乗ってみると、作品と観客とは想像以上の近さ。しかも観客と作品を隔てるガラスは、映り込みのほとんどない最新版。ウサギの水泳大会や、カエルとウサギの相撲などおなじみのモチーフが、人のほうが動いていく“逆”映画フィルムのような仕組みで、目の前を流れていく。
そうして待っていたのは、800年以上前に描かれた作品の中に入り込んでしまったような、不思議な体験……そう、ここは東京国立博物館で開かれている特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」の会場だ。
この動く歩道のアイデアも、密を避けるためだけではなく、実はコロナ以前から企画されていたものだという。同博物館の研究員、古川攝一(しょういち)さんは言う。
「2015年にも開催された鳥獣戯画展ですが、人だまりができやすく、行列が夜まで及んだことがありました。そんな混雑を回避しつつ、作品をユニークな視点で見ることができる新しい鑑賞体験として、動く歩道のアイデアが生まれました」
同博物館では初めて、また世界の美術展でも、これまで数えるほどしかなかったという動く歩道を設置しての展示。「鳥獣戯画展」だからこそできた部分も大きいという。
そもそも絵巻物は「肩幅くらいに開いて、巻きながら右から左へ見ていく」のが本来の正しい鑑賞方法とか。