

黒人への人種差別に抗議する「ブラック ライブズ マター(BLM)」運動が全米で広がって1年。今、そうした運動は他の人種差別問題にも影響を与えている。AERA 2021年6月14日号から。
【写真】人種を超えて10~30代前半の女性が、BLMやアジア系ヘイト反対のデモに多い
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BLMは、他の人種差別問題にも影響を及ぼしている。今年3月16日、南部ジョージア州アトランタで白人男性がアジア系のマッサージパーラー3軒をマシンガンで襲撃、6人のアジア系女性を含む8人が犠牲となった。直後、今までは見たことがない、アジア系ヘイトに反対するデモが各地で行われた。
「We are golden!(私たちは、黄金色だ!) We are worthy!(私たちは素晴らしいんだ!)」
直後の3月21日、ニューヨークのチャイナタウンで行われたデモの掛け声に、記者は驚かされた。goldenという言葉を初めて聞いたからだ。
「黄禍という差別の言葉で使われた黄色ではなく、肌の色をポジティブに表現したのが、goldenです」と、集会に来ていたクリスタル・ウォンさんは語った。
■アジア系市民もデモ
この日の集会は、目視で約2千人が集まっていた。記者が、アジア系市民がこれほど集まるデモを見たのは初めてだ。アジア系が多いが、白人、黒人、ヒスパニック系は、BLMでも見た若い人が圧倒的に多い。BLM運動家も駆けつけて、「団結」を呼びかけた。
サイレントマイノリティーではなく、立ち上がることの重要性を見せつけたBLMがなかったら、アジア系市民がこんな大きなデモを開くことはなかったと記者は考えている。
その後の市内の行進では、BLMデモをサポートしてきたバイクチームが先導した。行進の先頭の先に行き、バイクを並べて交通を止める役割だ。BLMのデモの手法が、アジア系ヘイト反対のデモにも生きていた。
高校1年生で中国系アメリカ人のキャロリン・ショーンさん(15)は5月2日、ニューヨーク市クイーンズ区で開かれたアジア系ヘイトに反対するデモに参加していた。