「週刊ヤングジャンプ」での連載開始から15年、圧倒的な人気を誇る歴史漫画『キングダム』。テレビアニメ化、実写映画化され、最新61巻までの累計発行部数は、8000万部(電子版を含む)を突破している。6月12日から「上野の森美術館」で開催される『キングダム展-信-』を前に、作者である原泰久氏にインタビューすると、大学時代、大学院時代に身に付けた理系的思考が『キングダム』制作につながっていると明かしてくれた。
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中国の春秋戦国時代を舞台に描かれる壮大なストーリー、迫力の戦場シーン、個性的なキャラクター、仲間との絆。多様な魅力が評価を集める『キングダム』だが、原泰久氏は、作品の軸となる「プログラミング的な考え方」が、ほかの漫画にはない武器だと話す。
「プログラミング的な考え方」は、九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部、以下芸工大)の大学院時代に培われた。
「映画監督になりたくて、芸工大に行ったんです。大学では芸術と工学の両方を学ぶので、デッサンやデザインから数学、情報解析など、幅広く講義を受けました。ものづくりが好きだったので、芸術系の講義は楽しいのですが、工学系は単位をとるために仕方なく勉強するという感じでした」
めざしているのは映画監督。大学3年の終わりに入る研究室(ゼミ)は、当然映像系の研究室と決めていた。しかし望んだ研究室は人気が高く、映画研究会の学生ですぐに埋まり、そのほかの芸術系の研究室も早くに定員が埋まってしまった。
「映像を学ぶために芸工大に行ったので、希望の研究室に入れなかったのはすごくショックでした。結局入れたのが、画像解析の研究室。そこで図らずも、プログラミングを学ぶことになったのです」
同じころ、原氏の前には漫画家という一筋の光も見え始めていた。幼少期から絵には多少の自信があったが、漫画家は雲の上のような憧れの職業。ただ、芸工大に入り、さまざまな情報に触れるなかで現実的に映画監督として食べていく難しさも感じ始めていた。