「そのときは、俳優の抱える不安なんて、作品全体から見たらなんてちっぽけなんだろうと思い知らされました。ドラマや映画はチームプレーなので、私の役がちょっと浮世離れしていても、他の役が切実なら、バランスとしては成立するんです。リカは、とても身体能力が高い設定なんですが、好きな人を追いかけて特殊能力を発揮する姿も、映像のプロの手にかかれば、ちゃんと迫力はあるのにユーモラスな画に仕上がって、見応えがあるんです。エンターテインメントって、真面目で真っ当なだけじゃつまらない。人間の突飛な部分や極端な部分をすくい上げて、そこに説得力を持たせることで、一つの作品として魅力的になるんだなと思いました」
リカ役のことしか考えず、作品としてどうなのかという目で見られなかった自分を振り返り、「作り手の人たちはさすがだな。私はただの女優だな」と思ったという。
「リカ」シリーズは続く。この春は、リカがなぜ純愛モンスターになったかを描いた深夜ドラマ「リカ~リバース~」が放送され、18日には、19年に放送されたドラマエピソードの続編となる映画「リカ ~自称28歳の純愛モンスター~」も公開される。その宣伝文句でも、「美しき魔性」という言葉が使われているが、高岡さん自身、この5月に、『魔性ですか?』という初のエッセーを出版したばかりだ。本の前書きでは、「若かりし頃は、雑誌のインタビューで、事前に原稿チェックができたとき、“魔性”という言葉が使われていたときは、すべて削除をお願いしてきました」とある。そのときは、魔性イコール悪女というイメージがあったが、大人になって「魔性」を辞書で引いてみると、「人を惑わせるぐらい魅力的な性質」という意味だと知った。以来、40歳ぐらいから、魔性と言われることを気にしなくなったらしい。
「私自身、リカほどではないにせよ、恋愛に夢中だった頃は、すれ違いの中で連絡が取れなくなって、何度も何度も電話をかけてしまうことぐらいはあったと思います。振られたあと、どうしても納得できなくて、『この時間ならいるだろう』と、相手の家に押しかけてピンポンを押したりとか。当時のことを思い出すと、『やだ、私の中にもリカはいるのかも』と(笑)」