すでにシステム開発は進んでいるのか。DeNAに取材すると、「分科会提言案に関して技術的な助言を求められている中で、すでにあるシステムをなるべく活用することも含め要件検討や実現にあたってネックになっている課題の整理と解決に向けた準備はしている」(担当)と回答した。
関係者によると、尾身会長らは5月ころからQRコードに関するシステムの議論に前のめりになり、大手IT企業のLINEも参加し、議論をしてきたという。この議論を尾身会長と進めたのが、DeNAの三宅邦明CMOだ。厚労省出身の三宅氏は厚生労働省新型コロナ対策推進本部参与でもある。三宅氏は厚労省に医系技官として20年以上勤め、19年からDeNAのCMOに就任。また、同じく厚労省医系技官出身の尾身会長と盟友関係にあり、「尾身さんとは厚労省で一緒に仕事をした関係と本人(三宅氏)が言っている」(DeNA担当)という。
両氏がQRコードを使ったシステムに関して採用するように政府に働きかけた経緯を西村新型コロナウイルス対策担当大臣に質問すると、内閣府大臣官房から意外な回答が寄せられた。
「西村大臣と尾身先生とは、連日のように面談し、意見交換をしています。QRコードの利用については、新型コロナウイルス感染症対策分科会で提言されており、尾身先生と西村大臣との意見交換の際に、現在厚生労働省本部参与であり、DeNAのCMOの三宅氏が同席されたことが一度あります」
ICT提言の背後に厚労省とIT企業とのコネクションが見え隠れするが、厚労省関係者はこう話す。
「同じ厚労省の役人ということで三宅氏からの話に前のめりになっているのではないでしょうか。17日の分科会での唐突な提言もその熱意の現れです。尾身会長の関心は東京五輪への提言よりICT提言のほうに実は移りつつあるのではないでしょうか」
まもなく開催される東京五輪・パラリンピック。開催中の感染拡大リスクの検証がなし崩しになっていく中、これからその防波堤に誰がなるのだろうか。(AERAdot.編集部 吉崎洋夫)
※分科会関係者のコメントの中にある「尾身さんと(三宅邦明氏が)慶應医学部の同窓」という表記を「慶應大学の同窓」に訂正しました。関係者の方にお詫びいたします。